徳川家康の「しかみ像」という絵をご存じですか。
戦に敗れ、恐怖のあまり、顔をゆがめている姿です。
検索してみると具体的な絵が出てくるので、よかったらチェックしてみてください。
一風変わった絵なので、きっと印象に残るはずです。
1572年、徳川家康は三方ヶ原の戦いで、屈指の名将として知られる武田信玄率いる武田軍と戦いました。
しかし、強力な武田軍に敗れ、大敗を喫しました。
面白いのはここからです。
家康は、何とか命からがら浜松城に帰りました。
このときの恐怖・悔しさ・情けなさを忘れないようにするため、絵師に自分のかっこ悪い姿を描かせたと伝えられています。
それが冒頭の「しかみ像」です。
家康は一生の戒めとして、折に触れてこの絵を見返したといわれています。
絵師に描かせるなら、普通はかっこいい姿を描かせるものですが、家康は、あえてかっこ悪い姿を描かせました。
これはなかなかできることではありません。
しかも「武将」という立場であればなおさらです。
こうした逆転の発想ができるところが、家康の優れたところです。
私たちが自分の姿を残すといえば、普通はかっこいい姿でしょう。
笑っている自分、かっこいい自分、ガッツポーズを決めている自分。
勝利や成功をしたときの自分を残すことが多いでしょう。
しかし時には、あえてかっこ悪い姿を残すことにも大切な意味があります。
泣いている自分、怖がっている自分、苦しんでいる自分。
特に失敗や敗北のあとこそ、シャッターチャンスです。
家康がそうであるように、折に触れて見返すことで、一生の戒めになるからです。
今では幸い、スマホで簡単に自撮りができるようになりました。
家康が「しかみ像」を残したように、あなたも自分の「しかみ像」を残してください。
戒めとして後から振り返るようにするためです。
つらくて思い返したくない姿かもしれませんが、戒めにするなら、この瞬間こそベストです。
撮りたくない瞬間かもしれませんが、残すべき瞬間です。
見返すたびに、当時の感情を思い出します。
「本当につらかった! 悔しかった! 二度とあんな目に遭いたくない!」と、気持ちが引き締まるのです。
ご存じのとおり、家康はその後、関ヶ原の戦いを経て、江戸幕府を開きました。
教科書に載っていないところで、家康のしかみ像が役立っていたのかもしれません。