知り合いが松葉づえをついて歩いている人がいると、どんなリアクションをしますか。
普通は心配になって事情を聞くのではないでしょうか。
「足、どうしたんですか。大丈夫ですか。何があったんですか」と。
松葉づえをついていると、一目で何かあったことがわかります。
知り合いであれば当然心配になるし、詳しい事情を聞きたくなります。
もちろんそれも優しさです。
相手は自分が心配されていると感じるでしょう。
しかし、それだけが優しさだけではありません。
相手の立場になると、見える景色が変わります。
会う人ごとに「足、どうしたんですか?」と聞かれるでしょう。
10人会えば10人から聞かれ、20人会えば20人から聞かれます。
その都度けがをした経緯を説明しなければいけません。
これはなかなか大変です。
心配されるのは嬉しいですが、何度も聞かれると、だんだん説明するのに疲れてしまい、気がめいってしまいます。
会うと聞かれ、事情を説明しなければいけなくなるので、人を避けたくなります。
説明疲れのせいで、けがの回復が遅くなることもあるかもしれません。
そこで優しい人は、あえて触れないでおくのです。
無関心というわけではありません。
相手の立場になって、あえて聞かないのです。
「いろんな人から足のことを聞かれて説明に疲れているだろうから、あえて今は触れないでおこう」と思う。
気になって事情を聞きたい気持ちはあるものの、相手の立場を察して、あえて質問は控えるのです。
心配して事情を聞くことも優しさですが、その限りではありません。
相手の身になって、あえて事情を聞かないことも優しさなのです。