私が勤めている会社で、ある日、社長から「アイデア募集」の依頼がありました。
会社の強みになるような斬新なアイデアを出してほしい、という内容でした。
募集と言っても、任意でした。
アイデアを送ったとしても、社長から「ありがとう」という返事がある程度でした。
そのため、みんなからアイデア募集という依頼は無視されていました。
まったく募集は集まらなかったと言います。
ある日、社長は頭をひねらせました。
「報酬付きのアイデア募集」に変更しました。
報酬は、3万円のマウンテンバイクです。
すると、社員の中から、やる気を出す人間が数名現れました。
やはり報酬があると、報酬目当てに頑張る人間が現れます。
しかし、その数は、まだ微々たるものでした。
「やる人間」と「やらない人間」とで、大きな差がありました。
報酬がマウンテンバイクだからです。
欲しい人は頑張りましたが、欲しくない人は、まったくやる気を出しませんでした。
募集が集まらず困っている社長に、社員の1人がシンプルな助言をしました。
その助言に従って、報酬の内容を変更したところ、なんと社員全員がやる気になりました。
多くの社員から斬新なアイデアが集まり、社長はむしろ、満足しました。
さて、その報酬とは何だと思いますか。
単純なことです。
「現金3万円」です。
3万円のマウンテンバイクは、欲しい人は頑張りますが、欲しくない人には単なるごみです。
そのため、いくら高級なマウンテンバイクとはいえ、やる気を出す社員とそうでない社員で、はっきりわかれていました。
しかし、現金3万円は、欲しくないという社員はいません。
「3万円のマウンテンバイク」と「現金3万円」では、価格は同じです。
しかし、やはりみんなが欲しいのは、現金です。
3万円のマウンテンバイクより、現金3万円のほうが欲しいです。
あからさまに現金を報酬として差し出すのを嫌がる人が多いですが、考えを改めてみましょう。
やはり人間は、現金が好きです。
報酬にする物品選びに迷うくらいなら、現金にするべきなのです。