子どものころは、しつけに厳しい親がたまらなく嫌なものです。
事あるたびにうるさく言ってくるのです。
「挨拶しなさい、お礼を言いなさい、座って食べなさい、ああしなさい、こうしなさい……」
もはや何かするごとに口を出してくるような状態です。
一挙手一投足に口を出してきて、言うとおりにしないと手を上げます。
時に鉄拳制裁を加えられることもあるのです。
子どものころは、親からのしつけがうっとうしくて仕方ありません。
もはや嫌がらせのように感じます。
自分の親が、世界一うっとうしい人間に思える。
そして思春期のあたりで爆発します。
しつけに厳しい親が嫌で嫌でたまらなくなり、親とまともに口をきかなくなるのです。
家出をしたくなるのもこの頃です。
親がうっとうしくて家にいたくないと思うのです。
しかし、大人になると、見る目が変わります。
しつけの意味がわかるようになります。
あるとき「親にしつけられていない人」と出会います。
そういう人と接すると、幼少期きちんとしつけてくれた親に感謝の念を覚えます。
大人になってから「あのころのしつけは正しかった」「うちの親はこんなにしっかりしていたのかの」と遅ればせながら気づきます。
そして一転して幼少期きちんとしつけてくれた自分の親に感謝できるようになるのです。
親も好きで口うるさく言っているわけではありません。
いちいち言うのも大変です。
親は、口うるさく言えば、子どもから嫌われることくらい重々承知しています。
それでも子どもの将来のことを考え、あれこれ口うるさく言うのです。
学校は、勉強を教えてくれても、しつけまでは教えてくれません。
先生は「しつけは教師の担当ではありません。家庭でお願いします」と言います。
しつけは、親の仕事であり、責任でもあります。
厳しいしつけを通して親の愛に気づきます。
しつけにうるさい親ほど、良い親はいないのです。