「幽霊には足がない」
そんな幽霊のイメージを広めたのは、円山応挙といわれています。
応挙の幽霊画を見ると、足がはっきり描かれていません。
最初に顔に視線が向き、次に全身を見ると、足がないことに気づきます。
足がないことで、地面に立っているのではなく、宙に浮いているように見えます。
見た人は違和感を覚えます。
「何だか変だ。これは人ではない。この世の存在ではない」と感じ、ぞくっとするのです。
きれいな顔をした女性でも、足がないことで、不気味に見えるのです。
美術の表現といえば、描くことをイメージしがちです。
描かなければ、表現のしようがないように思えます。
しかし、応挙のように、描かないことでできる表現もあるのです。
「絵で表現するには描かなければいけない」と思いがちですが、その限りではありません。
あえて描かないことで、何かを表現できないか考えてみてください。
「余白をつくる」
「省略する」
「すべてを説明しない」
そうすることで、見る人の想像力が働きます。
「すべてを描く必要がある」「100%説明しなければいけない」と思いがちですが、余白や省略が効果的に働く場面もあります。
こうした表現は、美術に限ったことではありません。
文学では「行間を読む」「余韻を味わう」という言葉もあります。
描かないことで、できる表現もあるのです。