私は22歳のとき、意外な場所でおむつを使ったことがあります。
2003年の新年を、ニューヨークのタイムズ・スクエアで迎えようと思いました。
タイムズ・スクエアのカウントダウンは、世界でも大変有名です。
「一度でいいから、生でその興奮を味わってみたいな」
憧れがありました。
そこで思い切って計画を立て、航空券を手に入れ、友人に予定を話していたころです。
たまたま友人の1人に、面白い助言をしてくる人がいました。
「友人に、タイムズ・スクエアでカウントダウンを経験した人がいるよ。話を聞くと、おむつをしていったほうがいいらしいよ」
待ち時間が長く、尿意に大変苦しめられたといいます。
私は大笑いでした。
事前に飲み物を控え、トイレに行っておけば、そんなことにはならないだろうと思いました。
しかし、そこは実際に経験した人からの聞き伝えです。
ニューヨークに到着してから、使うかどうかは半信半疑のまま、とりあえず薬局でおむつを購入しました。
ホテルの部屋にある鏡の前で、いい大人が慣れないおむつをしています。
なかなか見られない光景で、自分で笑ってしまいました。
万全の準備を整えてから、午後5時くらいにタイムズ・スクエアへ向かいました。
すでに大勢の警備員と現地の人々が集まっています。
問題なのが「柵」でした。
早めに来た人は柵の中に入れますが、遅く来た人は、満員のため警備員が拒みます。
私は午後5時に来たにもかかわらず、すでに遅いほうでした。
柵の中に入ろうとしても、警備員にやめさせられます。
「ええい。こんなところで諦められるか!」
しばらく眺めながら、一瞬の隙があったので、さっと入り込めたという幸運に恵まれました。
柵の中はすでに大勢の人。
周りには何百人という警官が見張っています。
12時までは、本当にただ人混みの中で、時間を過ごすばかりでした。
「あっ。ホテルから本を持参し忘れた」とも思いましたが、引き返すわけにはいきません。
夜の22時を回ったころから、すでに変化がありました。
トイレに行きたくなった。
事前に飲み物を控え、事前にトイレも済ませたはずなのに、我慢できないほど尿意に襲われます。
「なるほど。そういうことか」
理由がようやくわかりました。
人混みによるストレスや緊張のせいでした。
慣れない場所、多くの人混み、独特の緊張感。
そうしたことに体が反応して、いつもよりトイレが近くなりました。
実際に自分が経験して、ようやくわかった。
当然今さら、柵の外には出られません。
23時を過ぎたくらいで我慢の限界に達し、失禁です。
おむつの中で、トイレをしました。
やはり本人からであろうと、聞き伝えであろうと、経験者からのアドバイスは正しい。
信じられなくても、とりあえず素直に聞いておくほうがいいと思った一件でした。
この状況は、カウントダウンの有名どころでは、似たような事態になるでしょう。
世界から多くの人が集まりますから、何百人という警備員が柵を敷いて、タイムズ・スクエアと似たような状態になるはずです。
「カウントダウンは、おむつが必須」
笑ってしまいますが、真面目なアドバイスなのです。