「命をかける」という表現を使う人がいます。
「命がけでやります!」
「命をかけて頑張ります!」
「この仕事に命をかけています!」
本人は本気を強調するつもりで言っているのでしょう。
たしかに真剣な気持ちはよく伝わります。
「命までかけるなんてすごい」
「命を捧げて取り組んでいるのだな」
「命がけで取り組んでいるのだな」
力強い表現なら、しっかり本気も伝わるでしょう。
真剣な表情で言えば、説得力もアピールも抜群に思えるでしょう。
本気を強調するなら、これ以上ない最上級の表現に思えます。
しかし、ここが落とし穴です。
結論から言うと「命をかける」という表現は気安く使わないのが得策です。
薄っぺらく聞こえやすいからです。
極端な表現は、単なる口癖に聞こえ、説得力が不十分です。
うそや冗談のようにも聞こえ、信頼性がありません。
あまり強い言葉を使うと、かえって弱く聞こえます。
自信がない様子を極端な表現でごまかし、取り繕っているように聞こえます。
「命をかける」と言ったからには、万一うまくいかなかったとき、死ななければいけなくなります。
もちろん許されるはずがありません。
命は、人生で最も大切なもの。
命より大切なものはありません。
大切な命を気安く捧げるのは、あまりに安易と言えるでしょう。
口癖で言いたくなっても、喉のところでぐっと止めておくのがいいでしょう。
「命をかける」という表現を使うなら「人生をかける」と言い直したほうが、まだ説得力があります。
「命をかける」という表現は、できるだけ使わないのが得策です。
本気を強調したいなら、シンプルな表現のほうが有効です。
わざわざ極端な表現を使わなくても、代わりになる表現はたくさんあります。
「全力で頑張ります」
「ベストを尽くします」
「目の前の仕事に集中します」
「最大限の力を発揮します」
「最後まで諦めません」
シンプルな言葉のほうが、頭にすっと入ってきて、理解しやすくなります。
短い一言でも、強調と説得力は十分です。
人生で命をかける場面は、本当に限られます。
人生で「命をかける」と言える場面は、ほとんどありません。
普段から口癖になっているなら、早めに直しておくほうがいいでしょう。
本気を強調するなら、言葉より、仕事で見せるのが一番です。
仕事の態度や結果を通して本気を見せるのが、最も説得力があります。
仕事でしっかり結果を出しているなら、言葉はなくても本気が伝わります。