「一字の師」という言葉があります。
「鄭谷が斉己の詩の一字を直したところ、見違えるほど立派になり、師として拝された」という故事から生まれた言葉です。
言葉は、たった一字で意味が変わることがあります。
時には劇的に改善されることも少なくありません。
そんな一字の師は、意外と身近なところにいることもあります。
友人とレストランに行き、ウェイターから「コーヒーと紅茶のどちらになさいますか」と聞かれました。
何気なく「コーヒーでいいです」と注文したところ、後で友人から指摘されました。
「そういうときは『コーヒーがいいです』と言ったほうが、丁寧に聞こえるよ?」と。
「コーヒーでいいです」と「コーヒーがいいです」は、たった一字の違いです。
しかし、意味は大きく異なります。
「コーヒーでいいです」は、妥協して選んでいる響きがあり、少々失礼な印象を与えかねません。
「コーヒーがいいです」は、きちんと自分の好みで選んでいる印象を与えます。
たった一字の違いでがらりと意味が変わり、相手に与える印象まで変わるのです。
こうしたことは、なかなか自分では気づけません。
口癖になっていることは、無意識に発せられるため、自分では普通に感じてしまいます。
自分では「問題ない」と思っていても、他人から見ると、違和感を覚えることがあるものです。
悪気はなくても、いつの間にか悪印象につながっていることもあるでしょう。
教わるのは、上司や先生だけではありません。
家族や友人など、身近な人から教わることもあれば、年下や後輩から教わることもあります。
間違いや自分の至らなさを指摘してもらえるのはありがたいことです。
このとき、無視したり反発したりすると、せっかくの指摘が無意味になります。
「たかが一字」と思わないことです。
一字を直すことで、見違えるほど表現が洗練されることがあります。
人から問題を指摘されたら、素直に受け止め、きちんと訂正すれば、言葉遣いは良くなります。
一字の師は、身近なところにいるのです。