自宅で見る映画と、映画館で見る映画は、同じ作品でもまったく別のものです。
自宅で見る映画は「鑑賞」です。
映画館で見る映画は「体験」です。
似ているようでいて、決定的に異なるのです。
わざわざ映画館に足を運び、巨大なスクリーンと迫力のある音響で映画に没頭します。
周りにはお客さんがいて、どの人も「この映画を見たい!」という気持ちが共通しています。
真っ暗な室内に、眼前にはただ1つ光るスクリーン。
映画館で見る映画は、非日常感があります。
真剣勝負のような緊張感と高揚感もあって独特です。
それは鑑賞を超えた、特別な「体験」なのです。
今や映画は、映画のサブスクリプションで気軽に楽しめる時代です。
自宅に居ながらにして、膨大な作品の中から自由に視聴できるのはとても魅力的です。
レンタルとは違って、借りる手間も返す手間もありません。
手頃な価格なのですから、もはやデメリットがないと言っても過言ではありません。
しかし、それでもまだまだ映画館の役割は大きいものがあります。
「自宅で見られるじゃないか」「サブスクのほうが安いじゃないか」と思う人も多いでしょう。
たしかに新作映画は、公開して数カ月経てば、ネットで配信されるようになります。
気になる映画があっても、少し我慢すればいいことです。
それをわかったうえで、わざわざ映画館に足を運ぶのがいいのです。
映画館で見る映画は格別です。
素晴らしく特別な体験だからです。
私は以前、名作『タイタニック』を映画館で見たことがあります。
1997年の作品なので上映時期はとっくに終わっていました。
あるとき「午前十時の映画祭」で期間限定のリバイバル上映がされるということで、狂喜乱舞で足を運んだのです。
何度も見ているので、内容は知っているし結末も知っています。
それでもやはり映画館で見る映画は、自宅で見るものとはまるで違いました。
深い没入感があり、見たことがあるのにもかかわらず、初めて見るような感覚に包まれたのです。
クライマックスが近づくにつれて、周りからすすり泣く声が聞こえてきました。
それもまた、観客と共に過ごす映画館ならではの醍醐味。
そのときの体験は、今でも鮮明に覚えています。
あなたはきっとこれまで多くの映画を見てきたでしょう。
なかには「この映画、見たことあったかな」という作品もあるかもしれません。
時間がたつにつれて記憶が薄れていき、過去に見たかどうかはっきり思い出せなくなることがあります。
しかし、映画館で見る映画は違います。
自宅で見る映画は、見たかどうか忘れることはあっても、映画館で見る映画は忘れることはありません。
映画館で見る映画は、何年・何十年経っても、覚えているものです。
それは体験だからです。
わざわざ時間を作り、映画館まで足を運び、チケットを買います。
そして巨大なスクリーンを目の前に、しばし静寂な雰囲気のなか、映画の世界に没入するのです。
そういう経験は、忘れようにも忘れられないのです。
五感を使った体験だからです。
映画の世界に没入するのは、別世界に旅をしているのと同じことです。
映画館の鑑賞料金を「高い」と感じる人もいるかもしれません。
そんなときは視点を変えてください。
「貴重な体験を買う」「一生忘れられない思い出を作る」と思えば、むしろ安いと感じるのではないでしょうか。
月に1回映画館に行けば、1年で12回の特別な体験が手に入ります。
「一生記憶に残る体験」を月に1回味わえるとすれば、むしろ「贅沢でお得な旅」と言えるのではないでしょうか。
年齢を重ねるにつれて、新鮮な体験が減るといいます。
いいえ、それは誤解です。
上手に映画館を利用すれば、素晴らしい体験ができ、忘れられない思い出をたくさん作れるのです。