「あんなに頑張って覚えたのに、忘れてしまった……」
そんな経験が誰でも一度はあるのではないでしょうか。
一生懸命覚えたにもかかわらず、しばらく時間を置くと、記憶から消えていることがあります。
英単語だったり、人名や地名だったり、計算方法だったり、話の内容だったり。
「えっと、なんだっけ。思い出せない。忘れてしまった……」と悔しい思いをするのです。
記憶が消えてしまうのは悔しいもの。
時間をかけて一生懸命覚えたことを忘れているときは、ショックもひとしおですね。
しかし、それは本当に「忘れた」のでしょうか。
もちろん本当に忘れていることもありますが、実際はそうでないことも多いのです。
忘れていると誤解しているだけで、実は忘れていないというケースが少なくありません。
たとえば、歴史の勉強をして、人名や出来事を一生懸命覚えたとします。
時間を置いてからチェックすると、言葉が出なくて忘れたように思えますが、実際は違います。
答えをチェックしたとき「そうそう、それだ!」と思うことがあるのではないでしょうか。
「そうそう、それだ!」という感覚があるのなら、幸いです。
忘れていたとはいえません。
かすかに記憶が残っているということです。
本当にきれいさっぱり完全に忘れているなら「そうそう、それだ!」という感覚にはなりません。
「初めて聞いた」という感覚になるはずです。
記憶に残っているから「そうそう、それだ!」となるのです。
忘れたのではありません。
思い出せないだけです。
「忘れた」と「思い出せない」を勘違いしていませんか。
「忘れた」と「思い出せない」は似て非なるものです。
もちろん一夜漬けで覚えたことはすぐ忘れますが、時間をかけて覚えたことは、なかなか忘れないものです。
短期記憶は「海馬」というところで一時的に記憶されます。
その後復習を繰り返すうちに、脳が「これは重要なことだ」と判断します。
すると記憶が脳の「側頭葉」というところに移動し、長期記憶されるのです。
いったん記憶が側頭葉に移れば、記憶が定着する形となって忘れにくくなります。
私たちがよく口にする「忘れた」の多くは、実際のところ「思い出せない」という状態です。
「忘れた」と「思い出せない」を区別しましょう。
私たち人間の記憶力は、意外といいのです。