私は昔から理系の勉強が好きでした。
父が機械系の仕事をしていた関係で、自宅には仕事で使っている部品がたくさん転がっていました。
変わった形の磁石があったり、コンデンサーやICチップなど専門的な部品もあったりしました。
そうしたものが近場にあるという家庭環境に恵まれていた点もあります。
単に「面白そうだな」と思って、自分から興味を持っていじっていました。
しばらくすると、だんだん機械というものに興味を抱いてきます。
人間があらかじめ命令した動きをしてくれる道具。
これに妙な関心を覚えました。
それ以来、町中にある機械に興味を引かれました。
車が走る仕組み、ラジカセから音が聞こえる仕組み、エレベーターが動く仕組み、お金を入れれば物が買える自動販売機の仕組み。
「自動的に動く物」の仕組みがわかったとき、一種の快感のようなものがありました。
自然とのめり込んでいきました。
そういうことを、自分ではあまり意識がありませんでした。
単に「楽しいな」と思っていただけです。
あまり難しいことは考えていませんでしたし、まだ考えられない年ごろです。
しかし、そこにわが子の長所にいち早く気づいたのは、父でした。
機械関連に興味を持ち始めた私に対し、積極的に機械の話をしてくれたり、部品を持ち帰ってくれたりするようになりました。
ある日のこと、家族が突然「機械の図解」という本をプレゼントしてくれました。
お願いしたわけではありません。
「おそらく貴博は、こういう本が好きだろう」
普段の子どもの様子を鑑みて、買ってきてくれた本でした。
これが私にとって大ヒットでした。
機械の内部構造が子どもにでもわかるよう、カラーの図解つきの説明がありました。
宝の地図を渡されたような感動がありました。
それ以来、本に穴が開くほど何度も繰り返し読んだ記憶があります。
その世界に熱中して、今に至っています。
そうした経緯があり、今では技術系の仕事をするようになりました。
自宅でサーバーを組み立てたり、自分で一からプログラミングを作ったり、システムを構築したりするようになりました。
子どものころからの延長が続いています。
なにより素晴らしいのは、私を励ましてくれた両親です。
子どもは、なかなか自分の長所に気づけません。
子どもは、単に「楽しい。面白い」くらいにしか考えない。
それを気づかせるのが親の仕事です。
私の場合、親が「お前は理系に強い。そういう道に進め」と言い切り、必要な本を与えてくれたことがきっかけでした。
人生を長く生きている親が発見し、子どもに「それこそ長所よ」と、気づかせてあげることです。