私はこれまでたくさんの本を読んできましたが、記憶の残りやすい本と、記憶に残りにくい本がありました。
3年前に読んだ本を覚えていることもあれば、1週間前に読んだ本の内容を忘れていたりします。
覚えているかどうかは、時間は関係ないようです。
「この違いはなぜだろうか」と考えたとき、気づきました。
「著者の体験を交えて話している内容かどうか」です。
事実、物事、知恵、コツを、淡々と説明している本は、内容はわかっても、記憶に残りません。
説明書のように、正しいけれど、淡々と順番どおりに話を進める本は、あっという間に読めても、あっという間に忘れます。
しかし、体験記のような著者の体験を交えたストーリー仕立ての内容は、面白いうえに、忘れにくくなります。
人間は「点の記憶」は忘れやすいのですが「線の記憶」は忘れにくくなります。
歴史の年号を覚えにくいのは、点の記憶だからです。
「894年、遣唐使廃止」
「1635年、参勤交代」
「1941年、真珠湾攻撃」
淡々とした内容は、忘れやすいのです。
点の記憶は孤立しているので、記憶を保持するネットワークがないからです。
記憶を保持しやすくなるのは、線の記憶になったときです。
流れの中で覚える記憶は、忘れにくくなります。
著者の体験ストーリーは、一続きの流れになっています。
その体験の中で紹介する知恵やポイントは、ストーリーとともに、忘れにくくなります。
前後の話の流れが、記憶を保持するネットワークになります。
いくらわかりやすい説明とはいえ、すぐ忘れられる内容では役立ちません。
理想をいえば、わかりやすく、忘れにくい話をするほうが、相手のためになります。
そのために一番必要なのは、やはり話す本人の経験量です。
経験が豊富であるほど、体験を交えて話ができるからです。
わかりやすいうえに、忘れにくい話をすることができるようになります。
「説明がうまくなりたい」と願う人がいます。
そういう人は、まず経験量を増やすことです。
説明を裏付けるような具体的な経験を自分がまずしないと、物語を交えた話もできないのです。