私の職場に、以前、工藤さんという同僚がいました。
失礼ですが、とにかく太っている30代中盤の男性でした。
力士のような体格です。
椅子に座ると、ぎしぎしと音を立てています。
入社してから早々、隣に座っている私に、こう言いました。
「においがひどかったら、言ってください」と。
「何のにおい?」と聞き返すと「体臭」と言います。
工藤さんは自分が汗かきで、体臭がひどいことを自覚している様子でした。
太っているという体格もあり、暑い夏場、滝のように汗をかくそうです。
見るからに、想像できました。
工藤さんは、夏場を覚悟している様子でした。
本格的な夏がやってきました。
私は工藤さんの真横に座っていたのですが、本人が言うほど、体臭は気になりませんでした。
私が「夏場は汗が大変でしょ」と尋ねると「実は、会社に着てからワイシャツを替えているんですよ。へへ」と言います。
「あまりに汗の量がすごいんで、シャツの替えを持ってきているんですよ。へへ」と言っています。
丸い顔で「へへ」と笑うのが印象的な、彼の特徴です。
脱ぎ終わったシャツは、ナイロン袋の中に入れ、においが外に漏れないようにしているといいます。
見せようとしてきたので、断りました。
驚いたのは、替え用も1着ではなく、2着も、持ってきているのです。
出勤してからすぐ着替えるワイシャツと、昼すぎに着替えるワイシャツです。
1日に2回も着替える配慮には、参りました。
「そこまでするか!」と思ったのです。
もともとかなり太っている体格で、夏場は1日中、滝のように汗が流れているのです。
体臭対策をしっかりしているだけあり、彼の体臭は、ほとんど気になりませんでした。
においがゼロというわけではありませんでしたが、工藤さんの努力を知っているので、もう言えないのです。
「やるだけのことはやっている。後は勘弁してくれ」という、本人なりのアピールだったのかもしれません。