「どうしても身長を伸ばしたい」
そんな人には、身長を伸ばす手術があります。
「イリザロフ法」と「ISKD法」です。
どちらの手術も、私たちの体に備わっている自然治癒力を最大限に活用した手術です。
ロシアの整形外科医師「ガブリル・イリザロフ」が1950年代に開発した「イリザロフ法」と呼ばれる手術です。
手術の方法は、まず人工的に骨折させます。
次に折れた骨同士を少し離した状態で器具を使って固定させ、骨を再生させながら、徐々に身長を伸ばしていきます。
骨は、修復時に伸びる性質があります。
1日に1ミリずつ身長が伸び、うまくいけば10センチ以上身長を伸ばすことも可能です。
入院は必須であり、手術後1週間は骨を固定させるため、自由に動けません。
この手術は、身長を伸ばすためだけでなく、病気で変形した骨をまっすぐ矯正するため行われることもあります。
イリザロフ法は、高額の費用が必要です。
両足を行う場合、手術代のほか、器具や入院の費用などをすべて含めると、1000万円近くの費用を覚悟する必要があります。
身長を伸ばす都合上、両足を行うのが基本であるため、費用も膨大になります。
身長を伸ばすメカニズムはシンプルですが、高いリスクが伴います。
まず手術の後、強烈な痛みがあります。
傷痕が残るのは確実であり、炎症や後遺症に悩まされる場合も少なくありません。
「ISKD法」は、イリザロフ法より新しい手術法です。
基本的な骨の伸ばし方は、イリザロフ法と同じです。
人工的に骨折させ、器具で固定して、骨を再生させながら徐々に身長を伸ばしていきます。
イリザロフ法との最大の違いは「固定器の取り付け方」にあります。
イリザロフ法は、骨を折った後、固定器を「外部」に取り付けますが、ISKD法は「骨の内部」に取り付けます。
遠隔操作で伸びる棒状の器具を骨の中に埋め込み、少しずつ器具を伸ばすことで骨も伸ばしていきます。
ISKD法は骨を内部に埋め込むため、イリザロフ法と比べた場合、以下のメリットがあります。
メリットが多いことから、徐々にISKD法が主流になりつつあります。
ただし、骨を伸ばせる最大幅がイリザロフ法と比べて短いデメリットもあります。
イリザロフ法は10センチ以上伸ばすことが可能である一方、ISKD法は最大で8センチ程度が限界といわれています。
新しい手術のため、実施している病院はまだまだ少ないのが現状です。
どちらの手術も、年齢制限もあります。
成長期を終えて、骨の成長が止まった人が対象です。
また運動能力は手術前より落ちる可能性があります。
身長を伸ばす手術があるとはいえ、安易な考えで受けるのは危険です。
イリザロフ法・ISKD法も、高額の費用だけでなく、高いリスクも覚悟しなければなりません。
手術を受けるなら、本当に必要なのか冷静に判断することが必要です。