試合で負けた瞬間、手にしている道具を投げつける人がいます。
野球ならバットであり、テニスならラケットです。
地面に、思いきり叩きつけて、むかむかした気持ちを発散させようとします。
私も学生時代、テニス部や野球部などに所属していたので、気持ちはよくわかります。
学生時代の友人を含め、多くの選手を見てきましたが、ふと、気づいたことがあります。
道具に八つ当たりする人に限って、実力が伸びないのです。
なぜ、伸びないのか。
その理由は、3つあります。
当然ですが、まず道具がひどく傷みます。
痛んだバットやラケットを使うことになるので、練習しづらくなります。
思いきり叩きつけると、その1回で道具がダメになることもあります。
親や先生は「新しい物を買っても、どうせすぐ壊すだろう」と思います。
資金援助をためらい、練習の妨げになるのです。
先生や応援者は、道具に八つ当たりする選手を見ると、指導や応援をする気がなくなります。
怒っている人は、普通に怖いので、近づきにくいです。
励ましたくても励ませず、話しかけにくくなります。
「怖いから距離を置こう。ほうっておこう」と思い、選手の立場が孤立するのです。
最も重大な損失が、これです。
道具が悪いからと言って、道具に当たると、反省できません。
悔しい気持ちを、バットやラケットに当たると、そこで気持ちのけりがついてしまいます。
「自分は悪くない。悪いのは道具だ。道具が悪いから仕方ないね」で納得してしまい、自己改善の意識が希薄になるのです。
以上の理由からわかるように、道具に八つ当たりしても、いいことはありません。
むしろ、余計に自分を不利にさせてしまうだけです。
悔しさは、道具に当たるのではありません。
悔しさは、試合後の練習で、負けた悔しさを発散させるべきです。
練習にもいっそう身が入り、抜けている実力を埋めることができるようになります。
負けても、めげずに練習する姿を見た親や先生は、援助や応援をしたくなるのです。