散歩の途中、犬がきれいな花を見つけるやいなや近づいて、花を眺めている光景を目にすることがあります。
「おや。犬も花の美しさに感動しているのか!」
一瞬そう思いますが、残念ながら違います。
犬は、花の美しさに感動しているわけではありません。
美しい花に近寄る犬は「美しさ」に反応しているのではなく「香り」に反応しています。
衝撃的なことですが、なんと犬は色の判別が大の苦手です。
完全な色覚障害ではなく「赤系」と「青系」の2種類をぼんやりくらいにしか判別できないのではないかとされています。
美しい青空、空に浮かぶ白い雲、緑に生い茂った野原など、私たちが色鮮やかに感じるほどはっきり判別できていないようです。
美しさが理解できないのは、飼い主にとって残念な話でしょう。
私たち人間からすれば、色がわからない生活は考えられません。
犬の祖先はもともと夜行性であり、そのため目の発達が遅れています。
しかし、がっかりしないでください。
犬には、苦手な色の判別を補えるだけの大変強力な「聴覚」と「臭覚」があります。
聴覚は、人のおよそ5倍。
臭覚は、人のおよそ100万倍。
得意なにおいの場合は、なんと1億倍ともいわれています。
圧倒的な感度の鋭さです。
「色による感動」が小さい代わりに「におい」や「音」による感動が大きいというだけです。
犬は、人が理解する美しさの感動が小さい代わりに、人にはわからないような鮮やかな香りに感動しています。
それは私たち人間には、理解できないことです。
犬から見れば「このにおいの素晴らしさが、なぜわからないの」と思っているのかもしれません。
人間より劣っている点もあれば、人間以上に優れている点もある。
そう考えると「おあいこ」というわけです。