犬の食べ方は豪快です。
吸引器のように、次から次へと胃に流し込んでいきます。
ステーキを与えようものなら、ぺろりと一口で食べてしまうでしょう。
噛んではいるようですが「味わっている」というより「肉を引きちぎるために噛んでいるだけ」という印象。
数回噛んだ後、ごくりと飲み込みます。
「もう少し味わいながら食べればいいのに」
そう思いますが、実際のところ犬は「味わう」というのが苦手です。
舌の上には、味を感じるための味覚器官があります。
そもそも犬の舌は、味を感じる味覚器官が大変少ないのが特徴です。
人の舌は、およそ10,000個の感覚器官である一方、犬はおよそ2,000個しかありません。
人の5分の1しかないため、味が感じられにくい状態です。
例えるなら、味の薄いコンニャクを食べている感覚に近いかもしれません。
歯ごたえはあっても、味がよくわからない状態です。
味わって食べようにも、そもそも味を感じる感覚組織が少ないです。
また「飲み込む」という食べ方にも理由があります。
犬は人と暮らし始める前、野生の中で暮らしていました。
そのときは、食べている最中、いつ外敵がやってくるかわからない状態でした。
少しでも早く食べることを優先していたため「飲み込んで食べる」というスタイルが定着しています。
早く食べるために消化器官は人以上に強力である一方、味わうことは人より劣っています。
「おいしいものを与えればきっと喜ぶに違いない」と思いますが、実は大して味を感じていません。
少し残念ですね。
ただし、まったく味を感じていないわけではないようです。
全体的に味に関しては鈍感ですが、甘いものに関しては比較的感度が高いようです。
甘いものであるお菓子を食べるときには「甘くておいしいな」と思っているのでしょう。
この事情を知らない飼い主の場合、ゆっくりよく噛んで味わって食べさせようと、犬をしつけがちです。
犬は味がよくわからない上、本能として飲み込む食べ方なので、しつけにくいのです。