人間が泣くときは、どんなときですか。
「悲しいとき」
たしかに悲しいときに泣くのが一般的ですが、必ずしも悲しいときだけとは限りません。
楽しいときでも泣くときはありますし、怒っているときでも泣くときもあります。
人間が笑っているとき、どんなときですか。
「面白いとき」
たしかに面白いときに笑うのは一般的ですが、必ずしも面白いときだけとは限りません。
悲しいから笑うときもありますし、怒っているから笑うときもあります。
人がトイレに向かうとき、どんなときですか。
「用を足したいとき」
たしかに用を足すときにトイレに向かいますが、必ずしも用を足したいからとは限りません。
単に気分転換でトイレに向かうときもあります。
つまり「行動と気持ちとは、必ずしも等しいとは限らない」ということです。
ある程度、推測はできますが、それでもやはり完全ではありません。
他人からは「おそらく」という程度にはわかりますが、本当の気持ちは本人にしかわかりません。
いえ、本人ですらわかっていない場合もあります。
行動は「なんとなく」という理由の場合もあり、大きな意味を果たしていないことも多くあります。
それは犬も同じです。
ここまで、代表的な犬の気持ち、行動、対策などを紹介しました。
しかし、すべてが完全というわけではありません。
あくまで「こういう行動をするときの犬の気持ち」で、基本というだけです。
お願いしたいことは、すべて「おそらく」であって「絶対」ではないということです。
絶対と書きたい気持ちはやまやまですが、無理です。
他人である人間からは、推測しかできません。
犬の本当の気持ちは、犬しかわからないことです。
いえ、犬も、実はよくわかっていないこともあるはずです。
なんとなくだったり気分転換だったり、大きな意味はないけど「なんとなく」という理由で行動することもあることでしょう。
犬を育てるときには「断定」は避けることです。
「おそらく○○なのだろう」というくらいがちょうどいい。
そういう「曖昧さ」は大切です。
ここでは数多くの犬行動と気持ちをつなげた紹介をしてきましたが、もちろん完璧ではありません。
あくまで基本的な行動パターンというだけであって、時と状況に応じて多くの変化があります。
「そうか。犬の気持ちはわかってやれないのか」
諦める必要はありません。
完全に犬の気持ちを理解するのは難しいですが、できるだけ理解してあげようとする姿勢を維持することならできるはずです。
犬の気持ちが完全に理解できなくてもいいですから、できるだけ理解しようと心がける姿勢です。
その姿勢は大切です。
必ず犬に伝わります。
完全にわかってくれなくても、わかろうと努力している飼い主の行動から、次第に大きな信用が芽生えてきます。
その姿勢はいつまでも持ち続け「曖昧な部分」を残しながら犬と接していくのが、一番いい距離感です。
私も数多くの犬と接してきましたが、いまだに意味のわからない行動もあります。
うまく説明できない行動も日常茶飯事です。
いろいろな可能性を探りながら、犬の状態・表情・態度・行動などを見ていきましょう。
その中で、マニュアルには書かれていない独特の行動パターンを目にすることもあるでしょう。
それは飼い主と犬との間だけに通じるパターンです。
行動パターンの基本を大切にしながらも、特殊な状況も考慮に入れ、臨機応変に対応していきましょう。