「ピューピュー」
これはクッピーに昼食を与えるときの口笛の合図です。
これが面白いです。
口笛を聞くやいなや、クッピーは犬小屋からしっぽを振りながら飛び出てきます。
「出てくる」のではなく「飛び出てくる」のです。
口笛を聞いた時点で、これから何がやってくるのかわかっているのでしょう。
それにしても大げさに喜びます。
鞭のようにぶんぶん振っているしっぽを見て「やった、昼食だ。嬉しいなあ」という声が聞こえてきそうです。
いえ、心の中ではそう言っているに違いありません。
目が輝いているのが、よくわかります。
それだけ喜んでもらえると、食事をやる側としても、やりがいのようなものを感じます。
喜んで食べてもらえると、素直に「よかったなあ」と思いますし「もっとおいしい食べ物を与えてあげたいな」と思います。
「昼食だけで、そこまで喜ぶか!」と思います。
よくよく考えてみると、人間はご飯を食べるとき、こんなに喜びを表現しません。
いえ、本当は子どものころ、このくらい大喜びしていたはずです。
子どものころなら、食事の時間は嬉しかったですが、大人になるにつれてだんだん無感情になります。
大人になるにつれて、食べるときの嬉しさや感動のようなものを、私たちは忘れかけていきます。
「食事はあって当たり前」と思うようになります。
人にもよりますが、多くの人が黙って食べ始め、無表情で食べながら、食事が終わってもほったらかしになっていないでしょうか。
「いただきます」も「ごちそうさま」も「おいしかった」の一言もなしです。
食への感動が薄らいでいます。
それは、作っている人に対して失礼です。
犬が喜んで食べてくれると、提供側は喜びを感じるように、人間も喜んで食事をすると、作ってくれた人に報いることができます。
「食事は本来、大喜びするもの」
犬と接していると、忘れかけていた感情を思い出し、初心に返ることができるのです。