私が高校時代、日本史に精通した先生がいました。
教科書に書いていることは当然ですが、教科書に書いていないような細かい歴史事情にも精通していました。
その豊富な知識に尊敬しました。
また歴史的な建造物を巡るために、日本中を旅していて、そのときの写真を見せてもらったりもしました。
私が驚いたのは、日本史に詳しいこともありますが、それ以上に「記憶力」でした。
人の名前・年号・出来事の流れを、何も見ないで、その場でぱっと即答できるところに、驚異的な記憶力を感じました。
ある日、その記憶力はどうやって身につけたのかと、先生に尋ねたことがありました。
特別なテクニックがあるのかと期待していましたが、返ってきた答えは予想をはるかに超えた、シンプルなものでした。
「人に教えたことは忘れなくなるよ」という一言です。
先生は頭がいい、というだけではなく、人に説明をするから頭がよくなります。
人に説明をするときには、脳を幅広く使います。
自分の口を使い、耳を使い、身ぶりや手ぶりを使うなど、幅広い感覚器官を総動員します。
説明することは、アウトプットです。
しかし、アウトプットをする作業の過程で、数多くの感覚器官を総動員するため、強い刺激で脳に再び刻み込まれます。
生徒に説明するために、どんな言葉でどのような表現をすれば伝わるかと工夫し、頭をひねることで記憶も残りやすくなります。
その結果、説明したことは強烈に記憶に残ります。
もはや忘れないくらいです。
私も、同じ経験があります。
今このように自分で文章を書いていますが、読んだ文章は忘れることはあっても、書いた文章は忘れません。
3年以上前に書いた文章を読み直せば、そのときの記憶がよみがえります。
どこで、いつ書いた文章かさえ、正確に思い出せます。
われながら驚きます。
誰かに教える立場が、実は一番得をしています。
物覚えをよくするために、教える立場になってみましょう。
自分の知っていることを、先生になったかのように友人に話したことは、忘れなくなります。
今では、コンピューターの専門知識がなくても、簡単に自分のウェブサイトを作ることができるようになりました。
ブログを使って、広く一般に知っていることを公開してもいいでしょう。
積極的にアウトプットをする人が、物覚えがよくなるのです。