「初心忘るべからず」
これは、室町初期の能役者である世阿弥の格言です。
「学び始めた当時の意気込みや謙虚さを忘れず、常に高い志を持って物事に当たらねばならない」という意味です。
いつまでも初心を忘れないことで、気持ちの緩みを防ぎ、自己研さんを積み上げることができます。
ここまでは、おそらく皆さんもご存じでしょう。
さて、この格言には、実は裏の意味があります。
世阿弥が口にしたということは「世阿弥でさえ、初心を忘れて苦労をした」ということです。
つまりこの言葉の裏には「いかなる人間でも必ず初心を忘れてしまう」という人間心理をついた意味があります。
心を大切にする芸の世界でさえ、初心を忘れてしまい、たびたび苦労をしたくらいです。
私たちには、毎日のように忘れることでしょう。
これはもはや、人間の性分と言ってもいいでしょう。
夫婦生活も同じです。
「初心を忘れずに」と頭でわかっていても、慣れてしまえば必ず忘れてしまいます。
「忘れるだろう」ではなく「必ず忘れる」と思ってください。
初心を忘れてしまうと、夫婦関係がだれてしまい、言葉遣いや態度が悪くなってしまいます。
もちろんある程度の緩みは、いい味を出しますが、緩みすぎるとよくありません。
結婚したばかりの気持ちを忘れなければ、夫婦生活はどんなに楽になるでしょう。
夫婦としての原点は、結婚当初です。
夫婦としての仲を取り戻すポイントは、そんな「初心」です。
必ず忘れる初心を、季節の変わり目に思い出しましょう。
パートナーからもらった手紙を読み返したり、結婚式の写真を見返してみたりなどです。
それだけでも、ふっと気持ちがよみがえってくることでしょう。
初心に返ることが、長い夫婦生活を安定させるポイントなのです。