世の中には、仕方ない事情から夫婦が最悪のケースに至ることがあります。
夫婦生活の最悪のケースとは、やはり「離婚」です。
「この人とならうまくやっていけるだろう」と思い結婚したものの、一緒に暮らし始めてみると、想像と違っていることがあります。
1つ屋根の下で暮らしていると、相手の悪い癖が見えてきたりします。
考え方に変化が生まれてきて、すれ違いが多くなります。
修復が不可能になった結果「離婚」という最後の決断に至ります。
しかし、そういう常識をひっくり返す出来事に遭遇したことがあります。
知るきっかけになったのは、私が19歳のときに付き合っていた彼女でした。
ある日、彼女が「実は……」と言って、話を持ち掛けてきました。
聞くところによると、彼女のご両親は一度離婚を経験しているといいます。
「バツイチ同士の2人が出会って結婚をしたのか。よくある話だよ」
最初はそう思っていました。
すると彼女は「違う」と言います。
「違うってどういうこと?」
なんと衝撃の事実を知ります。
一度離婚をして、また同じ2人が再婚しています。
再婚というくらいですから、普通に考えれば、別の人と再婚するものだろうと思います。
しかし、離婚をした同じ2人が、また再婚している。
彼女も「最初から離婚しなければよかったのに」と笑っていました。
たしかに普通ならそう思います。
考え方が異なっていたり、価値観が合わなかったりなどして、切り札として離婚に至ります。
「え? 何があったの?」
驚いた勢いから、気になり、続けて質問しました。
さすがに直接、ご両親には聞きづらかったので、長女である彼女に理由を伺ったところ、印象的な話が返ってきました。
「一度離婚して、お互いの価値を再認識できたのだと思う。頭を冷やして、失ったことの大きさに気づいたのだと思う」
彼女からの言葉は的を射ていました。
離れた後、またくっつくという両親の不思議な行動の一部始終を、客観的に見てるからひしひし感じられたのでしょう。
「なるほど」と思いました。
失ってから気づく価値。
夫婦は身近すぎるため、存在するのが当たり前で、普段は価値が感じにくいものです。
いるときは、なかなか価値の大きさに気づけませんね。
失ってから、価値の大きさに気づくということです。
いがみ合った結果、別れると決断したはずなのに、離婚届を役所に提出してから妙に恋しくなります。
失ってから初めて相手の大きな価値に気づきます。
「そういうこともあるのか!」
握り寿司屋で見た、仲がよさそうなご両親の笑顔は、一度失った経験があるゆえに出てくる笑顔でした。
離婚といえば悪い印象ばかりが先行しますが、必ずしもそうとは限りません。
大変なことやつらいこともあったが、そういう部分も含めて、人生であり夫婦であると気づけたのでしょう。
離婚することで得られることがあり、また同じ2人が再婚ということがあります。
世の中には「よい離婚」もあるのかと、新たな価値観に気づかされる一件でした。