私は子どものころ、親からよく尋ねられた質問があります。
「将来は何がしたい?」という質問です。
覚えているかぎりで、最初に言われたのは幼稚園のころからです。
当時は「おもちゃ屋さんになりたい」とシンプルに答えていました。
おもちゃで遊ぶのが好きだから、おもちゃ屋さんになれば毎日おもちゃで遊べるようになるだろうと思っていました。
自分なりに、将来のことを考えた結果、はじき出した夢でした。
おもちゃに囲まれれば幸せになれるだろうと思っていた。
親は「そうか。頑張れよ!」と言っていました。
質問の内容は普通ですが、不思議だったのは、その後もたびたび尋ねられたことです。
小学生になったとき、また尋ねられました。
成長すれば、また考えは変わります。
小学生になったときに、親が私に「将来は何がしたい?」と再び尋ねました。
私は父が機械関連の仕事をしていた影響で、工作関係に興味を抱くようになっていました。
工具を使って、さまざまな工作を楽しんでいました。
「ロボットを作る人になりたい」という考えに変わっていました。
親に「ロボットの専門学校はあるの?」と聞き「探せばあると思うよ」と言われる。
そんな会話をしていたことを覚えています。
この質問は、それからも続きました。
中学に入学したとき、高校の入学のとき、大学受験、就職前などです。
親は、人生の区切りに「将来は何がしたい?」という質問をしてきます。
親が尋ねるということは、親はそのことに興味や心配がある証拠です。
私はそれが伝わりました。
今思えば「将来のことをきちんと考えましょう」という意味でした。
親がうまいところは「将来のことを考えなさい」と命令で伝えるのではなく「将来は何がしたい?」という質問で伝えたことでした。
質問された私は、しばらく黙り、自分なりに将来を考えさせられました。
将来のことを頻繁に質問する親の姿から、私の将来を案じたり期待したりする姿勢がひしひし伝わってきました。
一種の愛情表現でした。
もちろん早いうちに将来のことを決めなければならないルールはありません。
しかし、早いうちから自分の将来について真剣に考える機会をつくらせるのはいいことです。
普段から考えていないと「文系に進むか、理系に進むか」で迷ったり、どんな大学に何のために進学するのかで迷ったりします。
夢を持つのは早ければ早いほうがいい。
やりたい仕事を早くに決めることで、生きる方向性が早くに定まります。
人生の区切りに、ぜひ子どもに問いかけてみましょう。
「将来は何がしたい?」という問いかけです。
この質問は、考えさせられます。
子どもに将来について考えさせるために必要です。
しばらく黙って考えることでしょう。
「何が自分に向いているのか」
「何がやりたいのか」
自分と将来との関係を意識させます。
自分について試行錯誤する時間は、必要です。
もちろんまだ具体的な答えは返ってこないことでしょう。
「将来は何がしたい?」という質問から、将来を考える習慣をつくらせるだけではありません。
親が子どもの将来を案じたり期待したりするメッセージを同時に伝えることができるのです。