フランス料理のフルコースでは「ドーム型をした銀色の蓋」が登場することがあります。
お皿の上にかぶさっていて、中には料理が入っています。
あの蓋のことを「クローシュ」と呼びます。
蓋がされているので自分でクローシュを開けたくなりますが、ちょっとだけ我慢しましょう。
クローシュは、自分で開けないのがマナーです。
料理がテーブルに運ばれれば、お店の人がすぐ開けてくれるでしょう。
クローシュを開けるのはお店の人の仕事です。
クローシュは料理の鮮度や温度を保つ意味もありますが「演出」としての役目も含まれています。
演出のためにわざわざ蓋がされているのであって、それを自分で開けては台無しです。
たとえば、4人で食事をしていて、クローシュのついた料理が4人分運ばれてきたとします。
お店の人がアイコンタクトでタイミングを合わせて、同時に4人のクローシュを開けてくれるでしょう。
中からおいしそうな料理が登場して「わあっ!」となるのが演出です。
お店の人からのサービスを受け取ったら、次はあなたがリアクションをする番です。
このとき、笑顔で「わあ、おいしそう」とつぶやけば、お店の人は心の中でガッツポーズをするはずです。
ほんの一瞬の演出ですが、感動的なシーンです。
フルコースの見せ場の1つ。
感動の瞬間を目に焼き付け、しっかり楽しみましょう。