テレビは、便利な道具です。
何が便利なのかというと、移動せずとも、1つのスクリーンからさまざまな情報を音と映像を伴って見ることができるからです。
テレビをぼうっと眺めるだけで、次々と世間のさまざまな風景を目にできます。
さまざまな映像や音を発するテレビは、まさに脳を活性化させる救世主と思われます。
しかし、本当にそうでしょうか。
実は、必ずしもそうとは言い切れません。
最大の問題点は、テレビのスクリーンはあくまで「平面」ということです。
「平面」と「立体」は違います。
テレビの中で映るさまざまな風景には遠近感がありますが、人の目には「本当の立体」として映ってはいません。
人間の目は、2つありますね。
右目と左目とでは、若干見える映像が異なります。
この「左右それぞれで見える映像が若干異なる」というのが、重要なポイントです。
では、試してみましょう。
まず右目を開いたまま、左目を閉じてください。
次は逆に、左目を開いたまま、右目を閉じてください。
どうでしょうか。
見える映像が、わずかに異なっていることがおわかりでしょう。
左右の目の位置が異なるため、当然見える映像もわずかに異なります。
しかし、両目で見ているとき、見える映像が異なっているにもかかわらず、まったく違和感がありません。
なぜでしょうか。
それは、脳の中で自動的に「合成処理」がされているからです。
この合成処理は、高度な処理です。
右目と左目とで見える画像の違いを、脳の中で合成し、そのとき立体感も同時に生み出します。
このおかげで、私たちは遠近感を正確に把握してみることができます。
では、スクリーンに映る立体の場合はどうでしょうか。
スクリーンを見る場合でも、やはり右目と左目とでは若干見える映像が異なります。
しかし、見ているのは「スクリーン」に対してです。
スクリーンそのものは、遠近感を伴って立体に見えています。
スクリーンの中の映像までは、脳の中で本当の立体物としての認識はありません。
「ぼかし」や「重なり」という画像を駆使して、立体的であるかのように見せているだけです。
あくまで、立体に見える平面です。
「スクリーンで見る立体」と「現実世界の立体」は、脳には似て非なるものです。
脳の健康のために、テレビばかりを見させても、本当に脳を活性化させているとは言えません。
脳の合成処理機能を低下させてしまうことになります。
やはり現実世界のさまざまな風景を、ありのまま見るのが一番です。
空に浮かぶ雲や遠くにある建物や山を見ることで、脳の合成処理が活性化され、脳の健康によい影響を及ぼすのです。