執筆者:水口貴博

自立できる子どもに育てる30の教育法

20

大事な場面での沈黙が、子を育てる。

大事な場面での沈黙が、子を育てる。 | 自立できる子どもに育てる30の教育法

中学2年生のときに、私はマラソン大会に出場しました。

マラソン大会に出場するのは、代表者でもなく、成績優秀者でもなく、希望者でした。

私は自分から進んで希望し、マラソン大会に出たことがあります。

私は、マラソンは速くはありませんが、挑戦してみたい気持ちがあり、自分から希望して出場しました。

今考えると、よくもまあ自分から希望したなと思います。

実際に走り始めたとき、そのマラソン大会での出場者は県レベルの強豪ぞろいであることに気づきました。

私はそんなことも知らず、のこのこマラソン大会に出てしまっていたのです。

結果はもちろん、最悪でした。

最下位はもちろんのこと、それも圧倒的な最下位でした。

母はそのときに応援しに来ていました。

最下位の結果しか出せなかった私は、母にどんな顔をしていいのか、わかりませんでした。

最下位の結果でぼろぼろだったのに、母は私に何も言いませんでした。

帰りの車の中でも沈黙でしたが、私の頭の中はたくさんのことを考えていました。

「なぜあれほど遅れたのか。最初にペースを上げすぎたせいかな。出場すべきではなかったかな。母はどう思っているだろうか」

ずっと考えていました。

最下位という惨めな結果だったため、余計に考えていました。

それでも母は、私に何も話しかけませんでした。

というより、母はわざと話しかけないでいてくれたのです。

母は、私が考え、反省し、学び取る時間をあえて邪魔しないでいてくれたのです。

普通だったら「何をやっているの。かっこ悪い。もっと速く走れるようになりなさい」と、言われてしまうところです。

しかし、母は何も言いませんでした。

逆に、そのおかげで私は「自分で自分のことを考える」が、できていたのです。

この自分で自分のことを考える時間は、貴重な時間です。

「自立」という字が「自分」で「立つ」と書くように、自分で自分のことを考えるようにならなければ、自立にはつながりません。

本当の先生は、お父さんお母さん、学校の先生ではありません。

自分なのです。

母は何も言わず、自分で自分のことを考える余裕を与えてくれていたのでした。

今、あの沈黙は母の優しさだったのだなと、気づいているのでした。

自立できる子どもに育てる教育法(20)
  • 沈黙で、子どもに考える余裕を与える。
勝ち負けより、全力を出し切ったかどうかが大切。

自立できる子どもに育てる30の教育法

  1. 子どもは、自分から自立していく。
  2. 勉強は、学校で学ぶ。
    感情は、家庭で学ぶ。
  3. 甘えさせてもいい。
    ただし、甘やかしてはならない。
  4. 「難しい」と答えると、子どもは自立できない。
    「簡単」と答えると、子どもは自立する。
  5. 子どもは、親の真似をする。
    自立した親からは、自立さえも真似をする。
  6. 「痛み」を経験することで、免疫ができる。
  7. 親が笑うと、子どもは安心する。
  8. 子どもの経験を、親が横取りをしない。
    自分のことは、自分でさせるだけでいい。
  9. 子どもに押し付ける親は、失敗する。
    子どもに任せる親が、慕われる。
  10. 「子どもを理解する親」が、愛される。
  11. 育て上手な親は、子どもと「つかず離れずの距離」を取る。
  12. 「ダメな子」と言うと、子どもがダメになる。
    「それでいいんだよ」と言うと、成長する。
  13. 親の口癖は、人生の教訓。
  14. 働く姿を見せると、子どもは自立できる。
  15. 自分の部屋を持つことで「管理能力」を養うことができる。
  16. 自立するために必要なのは、親離れより子離れ。
  17. 子どもにあえてお金を持たせることで、金銭感覚を磨かせることができる。
  18. 「叱る教育」ではなく「褒める教育」をする。
  19. 聞くは一時の恥。
    聞かぬは一生の恥。
  20. 大事な場面での沈黙が、子を育てる。
  21. 勝ち負けより、全力を出し切ったかどうかが大切。
  22. 「大丈夫」と言うだけで、子どもの可能性は広がっていく。
  23. 自分のことを教えてくれる一番の先生は、自分だ。
  24. 学生の仕事は「勉強」だ。
  25. 子どもの長所は、好きなだけやらせるときに、大きくなる。
  26. 「何になりたいか」より「何がしたいのか」。
  27. 家族旅行で、親の自立した姿を見せることができる。
  28. 「自問自答」できる人が、自立する。
  29. 「かわいい子には、旅をさせよ」
  30. 泣きたいときには、泣かせてあげよう。
    泣くことで、子どもは強くなる。

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