中学生のころ、功一君という友人がいました。
功一君は、大のアニメ好きです。
少しマニアックな話になりますが、功一君は『魔方陣グルグル』の大ファンです。
『魔方陣グルグル』の単行本だけでなく、ビデオも全作品を揃えています。
毎日、暇があったら見ていると言います。
遊びに行くと、部屋にはポスターが貼ってあり、登場人物の人形まで置かれています。
熱烈なファンである様子が、よくわかりました。
とりわけ漫画『魔方陣グルグル』に熱中しているので、そのアニメの魅力が気になりました。
「そのアニメの魅力は何だろうか」
純粋な疑問が浮かんだので、尋ねてみました。
彼はしばらく考えた後、自分なりに『魔方陣グルグル』の魅力を語り始めました。
「すべてのストーリーが前向き」
「必ず、面白い結末がある」「世界観が大好き」
数十分、あれこれと語り始めました。
すると、面白い出来事がありました。
「何だか話をしているうちに元気になってきたぞ!」
功一君は、自分の好きな趣味について語っているうちに、元気になりました。
表情はぱっと明るくなり、嬉しそうに跳ねています。
興奮気味で、アニメのキャラクターの真似をしてくれ、私を笑わせてくれました。
私は単に「その魅力は何?」と尋ねただけです。
それ以外、何もしていません。
しかし、尋ねただけで相手を元気にさせてしまったのです。
その瞬間、はっと気づいたのです。
私はいつの間にか、彼の内観を深めるお手伝いをしていたのだと。
突然ですが、あなたの好きなことは何ですか。
好きな趣味を頭に思い浮かべてみましょう。
その魅力は何ですか。
「ええと、……」
「その魅力は何ですか」と聞かれて、言葉に詰まったと同時に、少し考えたはずです。
それはいい時間です。
好きなことを、さらに深掘りしているのです。
人間は、好きなことを答える機会はありますが「なぜ好きなのか」という理由まで答える機会は少ないものです。
「なんとなく好きだな」と思っているだけの場合が多い。
しかし、他人から「その魅力は何?」と聞かれると、あらためて自問自答することになります。
内観です。
「なぜ好きなのか」
「好きになったきっかけ」
「魅力について」
自分の好きなことについて、どんどん掘り下げる作用があるのです。
すると、元気になります。
「なるほど、自分が好きな理由はそういうことか」
他人に向けて話をしているにもかかわらず、話をしている本人こそ、驚くのです。
自分で自分を発見するからです。
相手の好きな話が出たら、次の質問を投げてみましょう。
「その魅力は何?」です。
すると相手は、魅力について自分なりに話をします。
「なぜ好きなのか」
相手は、たちまち元気になるはずです。
何気ない一言に、すさまじいパワーが秘められているのです。