イタリア料理のフルコースは、フランス料理のフルコースに比べて、品目が若干少ないのが特徴です。
いえ、厳密には、あえてイタリア料理よりフランス料理のほうが品目を多くしたと言ってもいいのかもしれません。
イタリア料理のフルコースでは肉か魚のどちらかを選びますが、フランス料理のフルコースでは魚と肉の両方が登場します。
「そういうものだ」と思えば、それまでです。
しかし、実はそういうふうになった事情や歴史があります。
フランスとイタリアのフルコースの違いではありますが、面白い歴史事情がうかがえます。
そこには「フランスのイタリアに対する対抗意識があった」といわれています。
テーブルマナー発祥の国は、フランスです。
フランスのシェフが『食事作法の50則』を書いて、そこから世界に広まったとされています。
しかし、フルコース料理の型ができたのは、イタリアが最初といわれています。
フランスが先にテーブルマナーを作ったのに、フルコースの型をイタリアが先に作ってしまった。
「イタリアには負けられない。イタリアよりいいものを作りたい」という、フランスのプライドがあったのでしょう。
そのため、イタリアのフルコースより、品目が多くなったとされています。
歴史を作ったのが人間なら、料理を作ったのも人間であり、マナーを作ったのも人間です。
今まで、ただ何気なくフルコース料理を食べていたのではないでしょうか。
料理の裏に秘められた歴史事情などを考えながら食事をすれば、また別の味わいが出て、面白くなります。