以前、お世話になった医者に、突然「靴底を見せてください」と言われ、驚いたことがあります。
「普段どのような生活をしていますか」という医者からの問いに対して、私は自分なりに回答していました。
これまで診てもらった医者は、患者の話を少し聞いて、薬の処方をして終わりでした。
そういうものだと思っていただけに、予想もしなかった質問で印象深く残っています。
すぐ「なぜ、そんなところを見るのですか」と尋ねたとき「なるほど」と思う回答が返ってきました。
「靴底から歩き方や歩く姿勢が見えてきます。靴は、患者さんの日常生活が見えやすいんですよ」
「あなたのことをもっと詳しく診断するためです」
はっとさせられました。
たしかに患者が医者に自分の普段の生活を語るときは、自分の都合のいいように答えやすい。
また病んでいるときは、客観的に自分が見られなくなることもあります。
また主観的になっているがゆえに、なかなか自分では自分が見えにくいこともあります。
自分では今の自分の状態は「こうだろう」という推定です。
合っているかもしれませんし、間違っているかもしれない。
そういうときこそ「靴」です。
靴は、嘘をつきません。
その人の人となりが、最も表れやすい場所の1つだからです。
靴が極端に汚れていれば、当然部屋も散らかっているでしょうし、食生活も乱れがちになっているはずです。
一概には言い切れませんが、参考にはなるはずです。
最も重要なのは「靴底」です。
靴底のゴム部分の減り具合が、左右のどちらかに偏っていたり、つま先やかかとが過剰にすり減っていたりなどです。
そうすれば、歩き方や姿勢は悪い状態になっているはずです。
がにまたで歩いていれば、靴のかかと部分が極端にすり減ります。
内股で歩いていれば、靴のつま先の外側がすり減ります。
靴底のすり減り方でその人の歩き方がわかり、姿勢まで見えてきます。
医者は、私の普段の生活を少しでも知り、正確な診断をしようとしていたのでしょう。
だからこそ、靴底を見たがろうとしていました。
突然ですが、今、あなたが履いている靴の靴底を見てみましょう。
どうなっていますか。
「自分では歩き方に問題ない」と思っても、実際のところはそう思い込んでいるだけかもしれません。
靴底のゴムのすり減り方が不自然な状態なら、いつの間にか歩き方もおかしくなっている証拠です。
その部分だけは、嘘をつかないのです。