人間は元来、怠け者です。
楽になるためには、苦労を惜しみません。
人間の悪いところのように思えますが、実はいいところでもあります。
なぜ、いいところなのか。
楽をするために、頭を使って工夫しようとするからです。
ほかの動物に比べて、人間は現在地球上で最も繁栄しています。
生存競争を勝ち抜いてきた結果です。
これまでの動物といえば「力」を武器にして生存競争を勝ち抜こうとしていました。
恐竜のように体格を大きくしたり、ワニのように鋭い牙を発達させたりなどして、進化を遂げてきました。
いわゆる純粋な「弱肉強食の世界」です。
「生きたい。生き続けたい。繁栄したい」
その気持ちが、体の一部を変化させていきました。
しかし、人類の場合は、これまでの動物とは違った部分を進化させて、生存競争を勝ち抜こうとしました。
「脳」です。
頭を使って生存競争を勝ち抜こうとしました。
ほかの動物より体格は小さく、鋭い牙があるわけではありません。
にもかかわらず、最も力を発揮できているのは、賢い脳があるからです。
人類に大きな体格はありませんが、集団で行動することで強大な力を発揮できます。
人類に鋭い牙はありませんが、石を割って石器を使い、鋭い牙の代わりになる武器にしました。
石から始まった人類。
それは石器だけにとどまらず、住む場所や衣服など、さまざまな工夫を凝らしてどんどん進化させていきました。
言葉も生まれました。
初期の人類であったホモサピエンスのころは、脳は500グラムしかありませんでした。
しかし、使う機会を増やした結果、脳はどんどん肥大化しました。
現在、私たちの脳は、およそ1,400グラムまで発達しました。
人類が誕生した当初を比べると、およそ3倍もの重さになっています。
すごい進化・成長・発達です。
もはや石器に限らず、衣食住のあらゆるところに、人類の工夫、発明の結果が見られます。
私たちは、便利な道具に囲まれて暮らすようになりました。
しかし今、この便利な道具が、人類に対して牙をむき始めています。