私たちは、勝ち方を学ぼうとします。
いかに相手を負かすか。
どうすれば相手より上に立てるか。
学校では、勉強でもスポーツでも、勝つことが大切です。
勝ち負けがあるなら、勝ったほうがよいに決まっています。
勝ってこそ認められ、褒められ、評価されます。
では、大人になって社会に出てから勝ち方が大切かというと、そこに注意が必要です。
世の中は、勝ち方だけがすべてではありません。
負けたほうがスムーズに行くこともあります。
特に社会に出て、組織の中で仕事を始めると、勝ち方だけでなく負け方も大切になってきます。
「勝って何が悪い」と思いますが、時と場合によります。
円滑にビジネスを進めるためには、上手に負けることが有効になる場面があります。
たとえば、取引先との接待でゴルフをするときです。
もともとゴルフが得意なら、取引先をこてんぱんにできるでしょうが、注意が必要です。
大差で圧勝してしまうと、取引先を不快にさせてしまい、関係に悪影響が及ぶことがあります。
勝てるゲームであっても、本気を出しているふりをしながら、上手に負けたほうがいい場合があります。
上司と知識量を競うときも、同じです。
自分のほうが博識でも、言い方によっては角が立ちます。
上司をばかにしているような雰囲気が出ることもあるでしょう。
知識で圧勝してしまうと、上司のメンツをつぶしてしまうかもしれません。
本当は自分のほうが詳しくても「○○さんにはかないません」と謙虚になっておくほうが、後々スムーズになるでしょう。
クレーム対応では、自分が悪くなくても、謝らなくてはならないでしょう。
お互いが主張を譲らないと、ますますヒートアップします。
口論で勝ち負けを競っても仕方ありません。
自分が正しくて、お客さまが間違っていても「申し訳ございません」と素直に謝っておくほうがスムーズです。
「勝つことがすべて」と思わないことです。
勝ち方を学べば十分とは限りません。
何でもがつがつ勝とうとせず、あえて負けることでも大切です。
勝ち方も大切ですが、負け方はもっと大切です。
わざとらしくない様子で上手に負けるのは、勝つ以上に難しいこと。
社会で円滑なビジネスを実現するには、わざと負けたほうがいいこともあります。
不条理もありますが、それが世の中。
世の中とは、矛盾と不条理の大海原。
矛盾と不条理の大海原では、勝ち方さえ知っていればいいわけではありません。
矛盾と不条理をするりとかわすために役立つのが、負け方です。
時にはわざと負けることが大切になることもあります。
「負けるが勝ち」という状況があるのです。