料理で時間がかかるのは、煮たり焼いたりする調理だけではありません。
時間がかかるのが、盛り付けの手間です。
誰かに食べてもらうために料理を作ったことがある人なら、わかると思います。
食事とは、味だけでなく、見た目からの影響も大きいものです。
盛り付けが美しければ、食欲をそそりますね。
また、見た目を少しでもきれいになると、目で見て楽しめるようになります。
喜んでもらいたい気持ちが強いほど、盛り付けにも気合が入り、時間もかかってしまうのです。
盛り付けという演出のために、料理人は修行を積み重ねています。
日本料理ともなれば、すべてにおいて本格的です。
私たちは普通、食事が出てくるまでの間は「調理をしている時間」だと思います。
しかし、実際のところ「食事を盛り付けている時間」にも、時間がかかっています。
刺し身を切るのは一瞬ですが、盛り付けに時間がかかります。
食事の量・色・向きなど、全体的なバランスを考えていると、盛り付けている時間のほうが長くなります。
料理によっては、作っている時間より、盛り付けている時間のほうが長い。
そういうことがよくあるのです。
そこでマナーがあります。
出された料理は食べ始めてもいいのですが、いきなり食べ始めず、まず外観を楽しみましょう。
食事の量は少なくても、繊細な彩りや美しい盛り付けがされています。
季節に合わせた海の幸や山の幸が、バランスよく盛り付けられていることでしょう。
しばらくその様子を目で楽しみましょう。
彩りや盛り付けが美しいほど、その裏には、料理人の苦労があるということです。
「おいしそうですね」
「きれいな盛り付けですね」
「色鮮やかですね」
それが料理人の苦労に報いることでもあります。
舌で味わう前に、目で味わうのです。