不作法な人がいる。
つい、注意をしたくなる。
しかし、ぐっと我慢する。
我慢した分、その教えを自分に言い聞かせる。
「自分は決してこういうことをしないように」と。
「人に優しく、自分に厳しく」という表現は、誰もが耳にしたことがある言葉です。
私は小さかったころ、この意味がよくわかりませんでした。
「自分に甘いほうがいいな」とのんきに思っていたり「他人に厳しくしてはいけないのかな」と疑問を抱いたりしてきました。
年を重ね、ようやくその本当の意味が理解できるようになりました。
人間関係では、自分に攻撃してくる人を当然ですが嫌いになります。
自分が嫌われ役になる代わりに、誰かに教えることができる人はとても素晴らしい。
しかし、誰もができることではありませんし、なかなかできることでもない。
自分に不快なことを言ってくる人を、嫌いになってしまう性質がありますから、不作法な人がいても、なかなか注意ができません。
注意をすると、相手に嫌われるかもしれないからです。
これ、あなたも私も考えている「本音」です。
注意をされる側には、不思議なことに「やれ!」と言われれば言われるほど、やりたくなくなるものです。
学校の宿題と同じです。
今しようかと思っていたときに、親から「早く勉強しなさい」と言われると、急にやる気が冷めて、やりたくなくなってしまいます。
命令には「反発作用」があるのです。
相手に注意しない代わりに、言いたい言葉を飲み込み、自分に言い聞かせます。
「自分は、絶対にこういうことをしないようにしよう」と。
すると、他人に優しくなれ、自分に厳しくなれます。
自分が行動を正すことで、それを見ている人たちが、あなたを手本として影響を受けます。
不作法な人も、かっこいい手本を目の前にすると「こっちのほうがいいな」と真似をするようになります。
こうして、周りによい影響を広めるのです。
社会においても、本当に優秀なリーダーとは、強制的な命令を出すリーダーのことではありません。
部下が自分から進んで仕事をしたくなるような上手な指示を出すリーダーが、本当に優秀なのです。
むしろ、仕事そのものは部下にしてもらい、リーダーはその管理に徹するという役割分担が一番です。
「人に優しく、自分に厳しく」という言葉は、昔からなじみのある言葉です。
その意味するところが思ったより深かったことに気づいたとき、私は驚きを隠せなかったのでした。