同じ行為でも、そのための手段はいくつか存在します。
たとえば、目の前にご飯がある。
それを素手で握って食べるか、それともお箸を使って食べるかは、どちらも同じ「食べる」という行為です。
しかし、そこからマナーの違いといえば、大きな差があります。
素手で握って食べる人は、野蛮に見え、大胆で品がないような印象を受けます。
ただ空腹を満足させるだけであり、ご飯そのもののおいしさや文化は感じることができません。
荒っぽい食べ方です。
一方、お箸で食べる人は、清潔で、上品で、ゆとりがあるように映ります。
もちろんお箸の使い方や持ち方などにもよりますが、お箸を使って食べるだけで、いつもよりご飯がおいしく感じられます。
手を汚さずに食べることができるため、自分のためにも、握手をするであろう相手のためでもあります。
マナーは何のためにあるかというと、自分のため、相手のため、より文化を楽しむためにあります。
マナーを大切にすることで、自分が汚れることがなく、またそれを見ている相手に不快な気分をさせることはありません。
なにより、マナーを大切にすれば、そこから文化が得られます。
ご飯を素手で食べれば文化も何も感じられませんが、お箸を使って食べると、おいしく感じられるようになるのは、そのためです。
お茶碗を手に持ち、お箸を使って食べると、いつもよりご飯がさらにおいしくなります。
同じ行為でも、品があるかないかによって、得られる豊かさに大きな違いが出てくるのです。
「マナーなんて面倒」
そう思う人もいるようですが、人生を豊かに生きるためにマナーは大切にしたほうが、自分のためになるのです。