学問をしていると、必ずいつか壁に当たるときがやってきます。
運動選手がよく口にしている「スランプ」という状態です。
毎日練習をしているのにもかかわらず、全然上達はしないし、面白くない状態になります。
ですが本当は、その壁こそが学問の面白さです。
それが来るということは、そこまで進むことができたということです。
実践していない人が、壁に当たることはありません。
自分の好きな学問をしていると、いつか必ず壁にぶち当たってしまうものです。
私はジャグリングが得意です。
ジャグリングとは、日本でいうお手玉のことです。
私は最初、2個しかできませんでした。
高校3年のときにジャグリングにはまってからというもの、それ以後ずっとジャグリングが生活の一部になってしまいました。
最初は2個しかできなかったのに、高校3年のときに3個でできるようになって突然はまってしまったのです。
実際のところ本人である私には、そんなに気合を入れて練習をした感覚はありません。
学校でも放課後、暇つぶしにやっていました。
浪人時代も、24時間勉強しているわけではありません。
勉強に疲れたら、頭は疲れていますが体は疲れていないため、ささいなストレス発散でジャグリングを楽しみます。
少しずつの練習が毎日積み重なると、いつの間にかうまくなります。
勝手に手が動き始めるのです。
浪人時代には、4個でできるようになっていました。
留学時代にも引き続きやっていました。
留学したときはアメリカの文化に慣れるために少し時間がかかってしまい、半年だけ練習をしていなかった時期がありました。
しかし、生活に慣れてからは、また以前と同じようにやっていました。
英語のリスニングで使うのは「頭」と「耳」だけです。
「手」は余っています。
余った手はジャグリングをやっているのです。
つまり、並行作業です。
頭や耳、手を使い、体中が大忙しでしたが、私にはそのペースがちょうどよかったのです。
リスニングが上達するにつれて、ジャグリングも上達していきました。
そこからです。
スランプがやってきました。
生まれて初めての本当のスランプ「どうしても5個ができない」ということでした。
しっかりこなすことができない、マスターできないといったところです。
最初の10秒くらいはできるのです。
しかし、長く続かないので自分のものにできた状態ではありません。
それが私にとって本当に壁でした。
いくらやってもうまくならない状態がずっと続いていました。
2個から3個は練習すれば、1時間でできるようになりました。
3個から4個は、6カ月くらいかかりました。
4個から5個が1年経っても、2年経ってもできません。
私は「この辺りが限界か。もともと私には5個は無理だったんだ。手先の器用さの限界かな」と落ち込みました。
しかし、諦めきれなかった。
これも、単純に好きなことだからです。
うまくはならない状態が続きましたが、練習だけは続けました。
なぜ勝手に手が動くのか、自分に問いをかけました。
少しずつやってみなければわからない「学び」と「問い」を繰り返しながら、頭の中では5個の理論が出来上がっているのです。
ジャグリングは偶数の場合、手は「右、左、右、左」と動かします。
これが奇数になると違った手の動きになります。
「右、右、左、左」になるのです。
もう一度、基礎を振り返り「なぜできないのか」「こうすれば少しよくなったような」を3年続けました。
私は4個から、5個へのステップアップに3年もかかりました。
3年も時間をかけてようやくできるようになったときが、壁を乗り越えた瞬間でした。
本当に分厚い壁でした。
今振り返ると、私にとっての有意義な3年間でした。
今思えば、つらかったけれど不思議と楽しかった。
スランプは、学問ができている証拠です。
壁に当たったときは、壁に当たるくらいの実力をすでに身につけている状態です。
壁で諦めてしまうこともできます。
しかし、せっかくですから、壁を越えてしまいましょう。
壁をつらいと思うのではなく、楽しんでしまうのです。
壁まで来ることができたなら、もう一踏ん張り楽しんでください。
越えられないのは、楽しみが足りない証拠です。
壁を感じたら、余計に楽しんでしまうことが大切です。