「アゲハチョウだ!」
私の実家は、愛媛県の田舎町です。
家は川や畑に囲まれ、幼いころは虫取り用の網を持って、アゲハチョウを追いかけていました。
大きくて派手な模様のアゲハチョウを捕まえて、祖父に自慢をしていました。
そんなある日、木にぶら下がっている不思議な生き物を見つけます。
巨大なイモムシが、木にぶら下がっているようです。
気になって近づいてみると「死んでいる虫」のようでした。
捕まえて、祖父に見せると「これはさなぎだ。まだ生きているぞ。もうすぐアゲハチョウになる。逃がしてやれ」と言います。
「え? これがアゲハチョウになるの? とても想像できない!」
アゲハチョウは、派手で激しく動き回ります。
一方、さなぎは地味で動きませんし、死んでいるようです。
見るからにあまりに違いすぎる両者ですが、同じ虫です。
アゲハチョウは、生まれたときからアゲハチョウではありません。
あの派手で美しい段階の前には、地味でみすぼらしい段階があることを初めて知り、驚き感動しました。
成長は、姿形を変えます。
「イモムシ→さなぎ→アゲハチョウ」という成長段階を経て、変容します。
あなたが浪人しているのは、さなぎの時期と同じです。
派手な部分は、一切ありません。
そういうものだと思って、受け入れましょう。
「本当にこれでいいのか」と悲しくなるほど地味な毎日が、淡々と続きます。
外部から見れば、死んでいるかのような地味な生活です。
しかし、意味がないわけではありません。
着実に大学合格へ向けた準備をしています。
じっとしているのも意味があり、地味な毎日が続くのも意味があります。
もうしばらくの辛抱です。
地味なさなぎの時期があるからこそ、試験に合格した後、アゲハチョウへと成長を遂げることができます。
地味でみすぼらしい段階があるから、派手で美しい段階へと成長できるのです。