私がよく行くレストランの1つに、24時間営業のところがあります。
お昼はウエイターが3人になりますが、夜は人が少ないため、1人でやっています。
しかし、夜とはいえ、立地条件がよいため、深夜でさえ3分の2の席が埋まることは珍しくありません。
1人のウエイターが、なんと50人近くのお客さんの配膳をしているという過酷な現場です。
客である私でさえ「大変そうだな」と感じます。
ウエイターは、深夜にもかかわらず、たくさんのお客をさばくために店内をいつも走り回っています。
「夜でもこれだけお客さんがいるなら、もう1人雇えばいいのに」
単純に、そう思います。
1人では足りないのは、一目瞭然です。
ふと、こんな心配をします。
「こんなにたくさんお客さんがいると、1組くらい食い逃げしてもわからないだろうな」
ウエイターが1人しかいないので、十分に気を配る余裕がなく、実際にそれは起こりえる話です。
食い逃げが見えないところで、1つ2つあるかもしれません。
しかし、です。
深夜にウエイターが1人なのは、食い逃げされてもいいという前提で、そうしています。
数字で計算すれば、すぐわかります。
実際にウエイターをもう1人雇えば、人件費が大幅に増えます。
深夜の時給ですから、例として1,200円とします。
夜10時から朝の8時までの10時間とすれば、最低でも12,000円の人件費が必要です。
しかし、1組のお客さんが食い逃げしたとすれば、食事の量にもよりますが、3,000円の損失としましょう。
12,000円の損失と3,000円の損失。
実は、ウエイター1人で1つ2つ食い逃げされても、お金の損失は小さくて済みます。
たとえ一組が食い逃げしたとしても、ウエイター1人に支給しているかぎり、損が儲けを上回るということです。
また深夜のお客さんですから、だらだらしたお客さんが多いです。
お客さんが多くても、実際は食事をしている時間より、雑談をしている時間のほうが多いです。
だらだらしたお客さんが多いため、ウエイター1人でも、何とかできます。
さて、この話を前提に、次はお昼の話をします。
一方、お昼にはそのレストランは、ウエイターが3人も増えます。
先の例で考えれば、お昼もウエイターが少ないほうが儲けは大きくなるので、ウエイターが少なくてよいのでは?と思います。
実は、お昼時のお客さんは、夜とは違い回転がいい。
平日の昼時になると、昼休みのため、会社員が押し寄せます。
押し寄せた客は、午後からも仕事があるので、食事が終われば雑談は控え、さっとお店を出て、会社へ戻ります。
お客さんが外した席に、また次のお客さんが座り、食事をしては、さっとお店を出ていきます。
この繰り返しを「回転」といいます。
お昼のお客さんは回転がいいので、ウエイターが3人いて、素早く配膳したほうがさらに回転もよくなります。
ゆえに、売り上げが伸びます。
ウエイター3人雇っていたとしても、回転率を上げたほうが、損が儲けを上回るわけです。
このように数字を考えると、世の中の不思議が解明できてしまいます。
レストランとはいえ、経営です。
きちんと儲けを出さないといけないので、そのための工夫をしているのです。