あるところに「早く定年を迎えて自由になりたい」と願う人がいました。
20代から働き始め、ずっと仕事の毎日でした。
雨の日も風の日も雪の日も、休むことなく真面目に働きました。
「もうすぐ定年だ。あとちょっとの辛抱だ」
自由を手に入れることが昔からの憧れでした。
「あと1年、あと1カ月、あと1日……」
そしてついにその日がやってきました。
いざ定年を迎え、念願だった自由な時間をようやく手に入れました。
「ついに念願の定年だ! これから第2の人生が始まる!」
素晴らしい日々が訪れてめでたしめでたし……となると思いきや、思いもよらない現実に直面しました。
定年後にすることを決めていなかったのです。
その人は毎日仕事をしてばかりで、やりたいことを見つけていませんでした。
趣味も好きなことも見つけていませんでした。
仕事をしているときは言われたことに従うだけでよかったので、自主性も積極性もすっかり衰えていました。
これという趣味もなく、親しい友人もいません。
やりたいことがないので、ひたすらぼうっと過ごす毎日を送りました。
外に出ることがなく、自宅でぼうっと過ごす日々となりました。
毎日暇を持て余し、退屈な日々が繰り返されていきました。
体を動かすことも減ってしまい、気力も体力もどんどん衰えていきました。
ついには早死をしてしまい、あっさり人生の幕を閉じることになったのです。
いざ自由を手に入れても、やりたいことがなければ意味がありません。
やることのない自由は、天国ではなく、むしろ地獄です。
老化を加速させ、早死を促すだけ。
自由を欲しがるのは結構なことですが、自由が手に入ったとき、何をやりたいか決めておくことです。
やりたいことを決めておかないと、いざ自由が手に入っても、ぼうっとする時間が過ぎるだけになります。
自由を求めることも大切ですが、やりたいことを決めておくことはもっと大切です。