「アイデアは、ぼうっとしているときに浮かびやすい」
アイデアを出す方法として、よく聞かれる言葉です。
企業家や発明家の成功談では「ぼうっとしているとき、ふと思いついた」といった話をよく聞きます。
発想力を高めるノウハウにも「リラックスした時間を作ると、アイデアが浮かびやすくなる」という話が定番です。
実際のところ、ぼうっとしているときにアイデアが浮かびやすいのは事実です。
たとえば、散歩中、入浴中、旅行中です。
ぼうっとしていると、緊張が解けるため、潜在意識が働きやすくなります。
潜在意識がさまざまな刺激を呼び起こすため、直感も働きやすくなる。
点と点が結びついて線になり、形になる。
結果として、アイデアが浮かびやすくなるのです。
あなたも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
「そうか。アイデアは出すには、ぼうっとしていればいいのか」
そう思って、積極的にぼうっとする時間を作る人もいるかもしれません。
しかし、この言葉をそのまま信じてはいけません。
誤解を招く表現が含まれているからです。
アイデアを出したいなら、ぼうっとするだけではよくありません。
完全に仕事のことを忘れ、本当にぼうっとしていると、何も思い浮かびません。
リラックスするには最高の状態ですが、アイデアは何も浮かんできません。
のんびりした時間を楽しむだけで終わります。
大切なのは「問題意識」です。
完全にぼうっとするのではありません。
問題を意識しながらぼうっとするのです。
ぼうっとしつつも、頭の片隅では問題を意識しておきます。
しっかり意識する必要はなく、わずかに意識する程度でかまいません。
問題を意識しながらぼうっとしていると「カラーバス効果」が生まれます。
カラーバス効果とは「意識に関係したものが見えやすくなる」という心理現象です。
「妊娠すると、街に妊婦が増える」という話は有名ですが、本当に妊婦が増えたわけではありません。
自分が妊娠することで、自然と妊婦に注意が向きやすくなった結果、増えたように感じただけです。
問題を意識していると、アンテナとフィルタリングの役割を果たします。
意識しているものが見つかりやすくなり、問題意識と結びつきやすい現象が起こります。
ぼうっとしているときにアイデアが浮かぶのも、これと同じ現象が起こっています。
問題意識があると、無意識のうちに「あれでもない。これでもない」と問題と結びつける作業をしています。
問題を意識しながらぼうっとしていると、あるとき偶然触れた刺激が問題と結びつきます。
あるとき偶然の一致が見つかります。
その瞬間「これだ!」という素晴らしいアイデアがひらめくのです。
「ぼうっとしているときにアイデアが浮かんだ」と語る人がいますが、厳密に言えば、完全にぼうっとしているわけではありません。
問題を意識しながらぼうっとしています。
ぼうっとするのはいいですが、頭の片隅では問題を少し意識しておきましょう。
常に問題を意識するのが難しいなら、一瞬思い出すだけでもかまいません。
問題を意識しながらぼうっとするからこそ、素晴らしいアイデアがひらめくのです。