「背骨」と一言で言っても、小さな骨の連続から成り立っています。
その骨と骨との間には、柔らかい椎間板があります。
おかげで背骨は180度、柔軟に曲がるようになっています。
若いときには、椎間板は分厚く、柔軟性を保っています。
しかし、年を取ってくると、次第にすり減って薄くなり、背骨の骨と骨同士が摩擦を始めます。
これが、背骨を通る神経の束を刺激して、腰の痛みを引き起こすとされています。
腰痛は、ある程度、年を取ればなりやすい病です。
「そうか。ならば腰に負担をかけないほうがいいだろう。運動は控えめにしよう」
そういう感覚を持つのが一般的でしょう。
しかし、必ずしもそうとは限りません。
腰痛の原因調査のため、専門家がアフリカのタンザニアに住む「ハッザ族」を調査した結果があります。
ハッザ族は、1日28キロも歩く狩猟採集生活を送っています。
私たち先進国の人なら、1万歩を歩くだけでもやっとですが、28キロといえばハーフマラソンを越える長距離です。
ハッザ族は、その日の食事になる獲物を狩りに出かける「狩猟採集生活」を送っているため毎日よく歩きます。
これだけ歩いていれば、腰には大きな負担がかかり、腰痛になっている人も多いのではないか。
調査団たちは、そういう予想を立てていました。
ところが意外な調査結果が出ました。
普通に生活をしている人で腰痛に悩んでいる人は、なんと1人もいませんでした。
多くの人が腰痛になっているのではないかと思われていただけに、大変な驚きだったとのことです。
この結果から歩くことは腰痛にいいことがわかってきました。
では、なぜ歩くことが腰痛の防止につながるのでしょうか。
一説によると、歩くことで背骨を刺激するのがよいのではないかとされています。
歩くとき、体は軽く上下に揺れます。
このとき、背骨にも上下の刺激が伝わります。
この刺激によって、椎間板を形成しているコラーゲンの生成を促す効果があるため、腰痛になりにくいのではないかとされています。
正確なメカニズムはまだ究明中ですが、いずれにせよ歩くことが腰痛に利くことは間違いないようです。
「そうか。ではさっそく今日から腰痛改善のために歩こう」
ここで、1つ注意も必要です。
腰痛の予防のため歩くのはあくまで、まだ腰痛になっていない人です。
腰痛になって腰を痛めている人は、すでに問題を抱えていますから、歩くことで逆に腰を痛める可能性もあります。
また、腰痛の原因は、単純なようで実は複雑です。
椎間板の異常だけでなく、精神的なストレスが腰痛に関係することもあります。
すでに腰に痛みを抱えている場合、素人だけでの判断は難しいため、必ず担当の医師に相談してからにしましょう。