執筆者:水口貴博

不況を乗り切る経営者の30の心得

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コンコルドの失敗には、不況を乗り切る教訓が隠されている。

コンコルドの失敗には、不況を乗り切る教訓が隠されている。 | 不況を乗り切る経営者の30の心得

1970年代後半、イギリスとフランスが共同開発した、一大国家プロジェクトがありました。

世界初の超音速ジェット旅客機「コンコルド」です。

スピードは、マッハ2.0。

つまり、音の2倍のスピードで空を飛ぶ飛行機です。

1976年就航し、通常の旅客機で8時間かかるニューヨーク・ロンドン間を、4時間で結べました。

大幅な時間の短縮です。

「死ぬまでに一度は乗ってみたい」

当時は夢の飛行機が登場したとして、多くの人が憧れました。

しかし、コンコルドにはスピードが速いために発生する難題がいくつかありました。

  • 飛行場に長い滑走路が必要であったこと
  • 騒音が大きいこと
  • 値段が大変高額であること

せっかくイギリスとフランスが巨額と時間を費やした事業です。

さらに巨額を投じて改善に取り組みますが「長い滑走路」「騒音」「高額」の3大欠点はなかなか改善できませんでした。

これらのネックに拍車をかけたのは、第2次オイルショックによる燃料価格の高騰です。

ただでさえ高額な航空券がさらに急騰し、会社の経営を傾けました。

欠点はありましたが、真剣に向き合わず、なかなか中止を踏み切れませんでした。

そんな中、ついに起きてはいけないことが起こります。

墜落事故です。

コンコルドは、音速で飛ぶため、ささいな衝撃が大きくなりやすい。

一時期、飛行時間あたりの事故率が最も低いため「安全旅客機」とされてきました。

しかし、度重なる航空事故のため、逆に最も高い「危険旅客機」という悪評に変わってしまいました。

2003年、定期運航を終了。

コンコルドは当時の注目を大きく集めましたが、商業的には最大の失敗作の1つといわれています。

これを「コンコルド効果」と呼びます。

投資が多くなるにつれて、投資がやめられなくなる状態を指します。

その後、経営者たちには悪い手本とされています。

何でもそうですが、巨額のお金や長い時間をかけたものは「手放しにくい」という心理が出てきます。

人間ですから、投資したことを手放すときには「もったいない」という気持ちが出てきます。

時間やお金をかけたものほど、手放したくない気持ちが大きくなり、経営判断を狂わせます。

先のコンコルドの例も、早い時期に撤退していれば、経済損失を小さくできたはずです。

しかし、もったいないからいつまでも商業からの撤退の決断がなかなかできず、ずるずる引き延ばして損失が大きくなる。

ついには死者まで出してしまうという最悪のケースに至ってしまいました。

このケースから学ぶことは「もったいない」という感情との戦いです。

無駄と思ったら撤退は誰でもわかりますが、惜しむ感情が絡むと、正しい判断がしにくくなります。

「もったいない」という感情は、人間らしい美点ではありますが、不況を乗り越えるうえでは注意したい感情です。

感情を捨てて、冷静になったうえで「本当に必要なのか」と考えることです。

不況のときこそ、コンコルドの失敗例を思い出したい。

「もったいない」という感情が、経営判断を狂わせていないでしょうか。

諦める勇気こそ、最大の不況対策。

正しい撤退は、前進です。

早い時期に身を引いたほうが痛みは小さい。

撤退時期が遅ければ遅いほど、痛みも大きくなります。

無駄・不要と感じたことは「もったいない」という感情や痛みをこらえ、潔く身を引くべきなのです。

不況を乗り切る経営者の心得(13)
  • 「もったいない」という感情を捨てて、冷静に判断する。
社員が陰で会社の悪口を言っているところは、倒産しやすい。

不況を乗り切る経営者の30の心得

  1. 大不況こそ、企業の害毒を一掃する最高の機会。
  2. 経済を変えようとするのではなく、会社内部を変える。
  3. 過去の成功にしがみついている企業は、一瞬で不況の波に飲み込まれる。
  4. 不況に合わせて事業内容を変えることが、一番の不況対策。
  5. 給料が上がらないのは「期待を超える仕事」をしていないから。
  6. 「国や政府が助けてくれる」という期待は捨てる。
  7. 不況時、本物は生き残り、偽物は消えていく。
  8. 楽をして成長を急ごうとする企業は、不況にもろい。
  9. 時間のかかった成長ほど、不況に強くなる。
  10. 手抜きをしがち見えない部分を、あらためて強化しよう。
  11. 「強い者、頭の良い者が生き残るのではない。
    変化するものが生き残るのだ」
  12. もたもた始める改善は、思ったほど不況対策にはならない。
  13. コンコルドの失敗には、不況を乗り切る教訓が隠されている。
  14. 社員が陰で会社の悪口を言っているところは、倒産しやすい。
  15. いくら不況でも、お客さまへのサービスは手を抜かない。
  16. 不況を乗り切るには、お客さまへのサービスを強化・充実させればいい。
  17. 不況のときこそ、海外旅行へ行け!
  18. 「辞めたい」という社員を、無理に引き止めない。
  19. 不況の突破口は、お客さまからのクレームだった。
  20. 大不況のときこそ、社長は一番元気でいなければいけない。
  21. 頑張った人を表彰するイベントを、定期的に設ける。
  22. 現金をもらって、嬉しくない人はいない。
  23. 「不況」「不景気」という言葉は、禁句にする。
  24. お金に余裕がないとき、判断力は著しく低下する。
  25. 無理な買わせ方で売り上げを伸ばした会社ほど、不況時にあえぐ。
  26. 本当にお客さまの役に立ち、喜ばれている会社に、不況は関係ない。
  27. 調子が悪いときほど「夜遅く」ではなく「朝早く」。
  28. 希望退職者を募集すれば、穏便に人の削減が可能になる。
  29. いきなり人を切らない。
    「ワークシェアリング」と「教育」で乗り切れ!
  30. 不況とは、忘れかけていた何かを思い出させてくれる時期。

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