祖母と一緒に散歩をしていたときのことです。
80歳を超えますが、祖母は俳句や短歌が趣味です。
積極的に新聞に投稿する趣味があり、事実、新聞に載ったこともある実力者です。
祖母と散歩に出かけるとき「ちょっとお待ち」と言い、必ず紙とペンを用意してから出かけようとします。
歩く速さはゆったりしていますが、一歩一歩はしっかりした足並みです。
きょろきょろあたり周辺の景色を楽しみながら、ゆっくり歩いているのが印象的でした。
ふと、立ち止まったかと思うと、先ほど忍ばせた紙とペンをポケットから取り出し、一句、詠み始めます。
祖母がきょろきょろしていた理由は、それでした。
ネタ探しをしていました。
何気ない日常のひとこまですが、ここに散歩を楽しむコツがあると思いました。
ただぶらぶら歩くのもいいでしょう。
しかし、ぶらぶら歩くより、目的を持って歩くほうが、散歩はもっと華やかになります。
祖母の場合は「俳句を作って、新聞に投稿すること」が目的でした。
俳句を作ろうという目的があると、物事を見たり感じたりしたときの吸収力が違います。
見ようとする目に力が入り、耳で聞こうとする音に対して鋭くなり、感じようとする触覚が敏感になります。
それが、散歩を楽しむコツです。
目的を持つことで、刺激を受け入れようとする力が強くなるのです。