日に当たれば、肌が黒く変色します。
このことを私たちは「肌が焼ける」と表現します。
「焼ける」という表現のためでしょうか。
火であぶって、黒焦げになった状態のように例えられた言葉です。
本当に肌が熱を伴って日によって焼けていると思われていますが、そうではありません。
焼けるというのは、あくまでたとえた表現であり、正確な状況を表しているわけではありません。
では、実際はどういう状況なのでしょうか。
なぜ紫外線に当たると、肌は黒くなるのか。
一言で言えば「紫外線から身を守る防御反応」です。
紫外線を浴び続けることは、皮膚にとって悪いことです。
紫外線が肌の奥まで入ると、コラーゲンやエラスチン繊維を破壊して、皮膚組織にダメージを与えます。
炎症や水ぶくれなどの原因になります。
また、細胞の遺伝子であるDNAを傷つけてしまい、皮膚がんのリスクを高めるなど、健康被害を与えてしまうのです。
そこで、皮膚は紫外線を感じ取れば、肌の奥のある細胞が動き始めます。
「メラノサイト」という細胞です。
メラノサイトは、メラニン色素と呼ばれる黒い色素を作る工場です。
なぜ黒い色素を作るのかというと、紫外線を遮るためです。
紫外線は、黒い色素に吸収される性質があります。
メラノサイトが作り出すメラニン色素という黒いバリアーによって、紫外線の侵入を防ぐ働きがあります。
海に泳ぐタコを怒らせると、黒い墨を吐く様子と似ています。
メラノサイトも、紫外線という刺激を受けて怒らせると、黒いメラニン色素という炭を吐き出し始めるのです。
メラニン色素はしみの元にもなるためか、悪いもの扱いされていますが、私たちの体になくてはならない存在です。
もしメラノサイトがなければ、私たちの体は真っ白になります。
ほんのわずかな日光に当たるだけで、紫外線によって細胞のDNAが傷つき、健康被害を受けてしまいます。
とてもではありませんが、日中、日光の下で活動することができなくなります。
私たちが健康的に暮らせているのは、メラノサイトがあるおかげです。
日光に当たって肌が黒くなるのは、実際に焼けているのではなく、体を守っている正常な肌の防御反応なのです。