あるところに、舞台のオーディションがありました。
一般募集であるため、希望者は素人ばかりです。
面接官が、希望者を次々と面接します。
舞台への意気込み、得意なスキル、これまでのキャリアなどを尋ねます。
ある1人の中年男性が現れました。
その人は、見覚えのある顔でした。
「ご職業はなんですか」
「俳優です」
なんと、すでに俳優であるにもかかわらず、一般募集から応募して面接を受けているのです。
しかも大物俳優です。
すでに俳優をしているなら、多少のコネで進めたことでしょう。
彼は、コネには一切頼らず、一番下から面接を受けに来ました。
少しは偉そうにしてもいいですが、彼は謙虚でした。
面接官は尋ねました。
「なぜコネを使わないのですか」
意外な一言が返ってきました。
「初心を忘れたくないから」
成功するために大切なのは、初心です。
経験を積んで大物になるほど、周りがこびてきます。
多くの人がこびてくると、自分は大物になったと勘違いして、気持ちが緩みます。
気持ちが緩んでは終わりです。
自己研鑽を怠り、態度が横柄になって、礼儀作法を忘れてしまうのです。
大物になるほど初心を忘れやすくなります。
大物になるほど初心を抱き続けることが大切です。
自分が夢に向かって歩み始めたときの気持ちは、夢を叶えてからも抱き続けることです。
その話を聞いた面接官は、深く感動しました。
彼は見事、面接に合格したのです。