私は今、100冊以上の本を書いています。
今回の本で、131冊目です。
「1冊目と131冊目を比べれば、どちらがよくできていますか」
そう聞かれれば、私はおそらく「わからない」と答えるでしょう。
冗談で言っているわけではありません。
本当にわからないのです。
たしかに文章の構成、流れ、観察力、また知識や知恵などは、明らかに今のほうが当時より優れています。
しかし、1冊目には、若さがゆえの「勢い」があります。
ブレーキなど一切踏まず、アクセルしか踏んでいない状態です。
その勢いが、いい味を出しています。
時は経ち、たくさんの経験を積んで、今ではいろいろな物事が見えてくるようになりました。
しかし、今では、見えてくるがゆえに考えすぎてしまい、思考が停滞することがあります。
世の中のこと、人の気持ち、理想と現実、本音と建前。
気にしないようにはしているのですが、知っていることは自然と考えます。
そこで余計なエネルギーと時間を奪われることがあり、若いときの勢いが衰えます。
知りすぎているがゆえに、考えすぎてしまうことです。
それがブレーキになります。
若いときには、世の中のことを知りません。
知らないがゆえに勢いで書いています。
無駄なことは一切考えず、さっと判断して書いて、スピードがあります。
その勢いが結果として、いい文章の流れ、いい味を出します。
今、振り返れば、危ない橋を渡っているなと感じる部分もあります。
しかし、若さの勢いでそれを乗り越えています。
これが若さの特権です。
若さには「知らない」という勢いがあるのです。
年を取れば、これまでの経験、知識、知恵を元に文章を書きます。
これらがいい味へと変わっていくというのは、これまでの通例です。
しかし、若いときにはできないのかというと、そうでもありません。
若いときには「勢い」という武器を使って、進めばいい。
若いなら、知らないがゆえに勢いで勝負すればいいのです。