執筆者:水口貴博

子どもの「外遊び」のすすめ

5

現代は豊かだ。それをわからせるには、野外キャンプの体験が一番。

現代は豊かだ。それをわからせるには、野外キャンプの体験が一番。 | 子どもの「外遊び」のすすめ

私が子どものころ、野生的な野外キャンプを体験したことがありました。

愛媛の山奥に「愛媛森林公園」という野外キャンプ専用の施設があります。

近所の人との企画で話が勝手に進み、親からは「面白いよ」と言われたので、ぜひ参加することにしました。

総勢20名くらいで、1泊2日のキャンプです。

ところが、これがとんでもない経験の連続になりました。

行ってみると、周りには民家は一軒もありません。

道路はあっても、全然車は通らない。

まさに山奥。

夜になったらお化けでも出そうな場所でした。

聞こえるのは、虫の鳴き声、川で水が流れる音、風が吹く音ばかりです。

まず、そんなへき地に驚きました。

到着するや否や、まずテントを張って、簡易的な家を造ります。

ご飯を作るときは火が必要ですが、あえてライターは使いません。

近くにある木をおので切って、切った木同士をこすり合わせ、摩擦熱で火をおこします。

これがまた、一苦労でした。

いくらやっても火がつかず、私は「ライター使おうよ」と言っても、周りの大人たちは、ダメだといいます。

私は挫折して、ほかの友人に火をおこしてもらいました。

火がついたと思ったら、次はご飯です。

ご飯を炊くときも、あえて炊飯器は使いません。

「飯ごう」という屋外で使用する携帯用炊飯器具を使って、火で温めながらご飯を炊きます。

火が弱いとご飯はうまく炊けませんし、火が強すぎるとご飯はぱりぱりになります。

夕方になれば、お風呂の時間です。

当然ですが、湯沸かし器なんてものはありません。

大きなドラム缶に水を入れ、火をたいてお風呂を作ります。

そんな野生的なお風呂に入るのは初めてです。

極めつけは、夜でした。

周りに民家は一軒もないので、まさに「闇」です。

夜中にトイレに行きたくなって、テントの中で目が覚めました。

いつもなら、スイッチ1つで電気をつけられますが、そんなものはありません。

頼りになるのは、月の光だけ。

そのかすかな光を頼りに、川端まで行き、おしっこをしました。

この経験は、便利な道具に囲まれていた私にとって、衝撃でした。

あえて、山奥で生活をする。

あえてライターを使わない。

あえて炊飯器を使わない。

電気もない。

私は貴重な経験ができました。

一度でもそういう経験をすると、現実への見方が変わりました。

キャンプ場から家に帰ったとき、家中の当たり前の風景が、大変豊かであるように感じられました。

指先で一瞬に火がつくライター。

ワンタッチで、お風呂が沸く湯沸かし器。

ボタン1つで、ご飯が炊ける炊飯器。

スイッチ1つで、明るくなる電気。

当たり前だと思っていた機器の便利さを実感でき、そうした機器の便利さをいま一度体感できた貴重な経験でした。

「現代は豊かだ」

どの大人たちも、そう言います。

しかし、子どもは生まれたとき、初めから豊かな機器に囲まれているので、当たり前だと思ってしまう。

それをわからせるには、野外キャンプを体験させるのが、一番です。

豊かさを感じさせるのではなく、いま一度、原点を体験させるのです。

子どもの「外遊び」のすすめ(5)
  • 野外のファミリーキャンプを通して、生活の原点を体感させる。
進んだ現代社会だからこそ、昔の遊びを教える価値がある。

子どもの「外遊び」のすすめ

  1. 外遊びには、子どもが生きる力に必要な要素がすべて備わっている。
  2. 家の中のゲームだけでは、生きる力を身につけられない。
  3. 自信は、外で遊んでいれば、自然と身につく。
  4. とりあえず行動していれば、自然と話は広がっていく。
  5. 現代は豊かだ。
    それをわからせるには、野外キャンプの体験が一番。
  6. 進んだ現代社会だからこそ、昔の遊びを教える価値がある。
  7. 力任せでは勝てない昔のゲームでは、慣れた大人ほど有利になれる。
  8. 四季のある日本だからこそ、特に外遊びはおすすめ。
  9. なぜ大都会ほど、大自然があるのか。
  10. 自然の音を聞くと、子どもは強く育つ。
  11. 旅行が難しいなら、せめて日帰りのピクニックくらいならできるはず。
  12. 犬と散歩しているときに、口喧嘩は起こらない。
  13. 畑仕事を手伝わせると、不思議と味覚が研ぎ澄まされる。
  14. スポーツは、体の運動だけではない。
    脳の運動でもあった!
  15. 団体競技はどれも、頭を鍛える頭脳ゲームだ。
  16. 免疫力を高めるためには、清潔すぎてはいけない。
  17. 部屋の中は、刺激が限定されやすい。
  18. 「スクリーンで見る立体」と「現実世界の立体」は、脳には似て非なるもの。
  19. どんなにテレビが進化しても、現実世界の刺激にはかなわない。
  20. エアコンは、人の生活を便利にする。
    しかし、頼りすぎると不便にする。
  21. 国語の読解力は、経験が豊富なほどイメージが鮮やかになる。
  22. 体験を優先すると、必ず後で追い上げる力になる。
  23. 立って歩けるようになれば、外遊びをしてもいい時期。
  24. 子どもが泥んこになって帰ってくるのは、一生懸命に外で遊んで帰ってきた証拠。
  25. 真っ暗闇だからこそ、あらゆる怪物をイメージさせられる。
  26. なぜ、ウォーキングマシンは、続きにくいのか。
  27. 門限があるから、遊びの密度が濃くなる。
  28. 私たちには「新しい刺激に触れて、自分の領域を広げたい」という野心と冒険心が眠っている。
  29. 子どもの持ち物に名前さえ書いておけば、迷子になっても怖くない。
  30. 成長のために「遠くへ行ってみたい」と思う子ども。
    安全のために「遠くへ行くな」という親。
    この矛盾が問題だ。

同じカテゴリーの作品

関連記事

© HAPPY LIFESTYLE CORPORATION