西洋料理では「ナイフとフォーク」を使って食べますが、和食では「箸」を使います。
もちろん個人差はありますが、一般的に、箸を使うほうが難易度が高いように思えます。
たった2本の棒です。
「日本料理で一番大切なマナーは何ですか」
そう聞かれれば、私は「箸の使い方」と即答します。
西洋料理はナイフとフォークの使い方が鍵を握るように、和食では箸の使い方が鍵を握ります。
箸は、和食の基本です。
箸の使い方は、和食マナーの善しあしと、大いに関係があります。
実は、和食マナーの大半は、箸の使い方が占めています。
2本の棒である箸を取るとき、どうしていますか。
箸使いの美しさは、取る瞬間から始まっています。
単に箸を取ればいいだけだろうと思うのですが、どうでしょうか。
和食には、手で持ち上げてはいけない器があります。
そうした器から口へ食事を運ぼうとする際、こぼれ落ちないように、つい前かがみになってしまいそうになります。
しかし、この食べ方はマナー違反です。
日本料理では、基本的にハンカチを使いません。
そもそもハンカチは西洋のものです。
もちろんハンカチを持参してもいいですが、会席料理の場合、基本的に使いません。
懐紙は、食事中、さまざまな場面で使います。
初めは面倒だと思いますが、慣れてくれば、大変便利な物です。
「どういうときに懐紙を使うべきなのか」
懐紙は使い方もさることながら、使い終わった後も大切です。
懐紙は、食事中の汚れを拭いたり隠したりするために使います。
使い終わった懐紙はごみになるわけですから、その場に置いて帰りたくなります。
「日本料理は、懐紙を持参するのが面倒」
これは、私が率直に思った感想です。
日本料理ではナプキンは登場しません。
割り箸を割るときにも、マナーがあります。
普通に割ろうとすると、左右に手がありますから、横に向けて割ろうとする人もいるのではないでしょうか。
たしかに左右に割るほうが引っ張りやすく、力が入りやすいです。
「食べ方は個人の自由だ」
「食べ方を、他人からとやかく言われたくはない」
「好きな食べ方をさせてほしい」
会席料理は、季節によってメニューが大きく変わります。
「一汁三菜」という基本は変わりません。
何が変わるのかというと「使われる食材」が大幅に変わるのです。
和食では、お味噌汁など「吸い物」が頻繁に登場します。
特にあらたまった和食の場となれば「蓋付き」の吸い物が一般的です。
ここで1つ注意したいことがあります。
蓋付きの吸い物は、時間が経って冷えてしまうと、椀に蓋が密着して開けにくくなります。
早めに手をつけていれば、こういうことにはならないのですが、状況によります。
すぐ開けようとしても、何らかの状況で、すでに開けにくい場合があるのです。
吸い物の中には具があります。
どれも簡単に口にできる具ばかりといいたいところですが、1つ、食べ方に大変困る具があります。
貝類です。
蓋を開けた後、よくやってしまうのは、水滴を取る動作です。
蓋を振って水滴を取る動作をした経験は、一度はあるのではないでしょうか。
しかし、無理に蓋を振って水滴を取るしぐさは、少し慌ただしく見えます。
和食では、ご飯と吸い物が出てきます。
ご飯を食べながら、吸い物をいただく人も多いのではないでしょうか。
一緒に食べたほうがおいしいと感じますが、気をつけたい点はここです。
器を移動させるときには、注意したいことが2つあります。
(1)箸を使って、器を移動させない
箸の先を使って器を移動させるのは、マナー違反です。
格式ある日本料理では、蓋付きの吸い物が頻繁に登場します。
蓋を外すときにはルールがあります。
基本的に取った蓋は、裏返しにして盆の外に置きます。
箸と器には、持ち上げる順番があります。
右手に箸を持っていると、つい左手で器を持ち上げたくなります。
しかし、これはよくないマナーです。
和食には「手に持ってよい器」と「手に持ってはいけない器」があります。
見た目もそっくりな器。
明確に区別されているので、あらかじめしっかり覚えておきましょう。
魚をいただくとき、やってしまいやすいマナー違反があります。
魚の上身をすべて食べ終えると、骨がむき出しの状態になります。
骨と骨との間に隙間があり、その隙間から魚の裏側の身をつまもうとするケースです。
刺し身に、直接醤油をかけるのはマナー違反です。
直接醤油をかけると、必要量が調整しにくくなるからです。
マナーとしては、小皿に醤油を入れ、刺し身をつけて食べます。
日本料理では、基本的にご飯のおかわりは自由です。
好きなだけ食べられます。
ただし、おかわりをするとき、守りたいマナーがあります。
食事中に、箸を休めたいときがあります。
箸置きがあれば困らないのですが、問題なのは、箸置きがない場合です。
多くあります。
使い終わった箸にも、マナーがあります。
まず「普通の箸」と「割り箸」の場合で少し異なります。
・割り箸の場合
和食の席では、テーブルにつまようじが用意されていることがあります。
食後、歯の間に挟まった料理の食べかすが気になり、その際に使うものです。
歯に食べかすが残ったままでは、自分が不快になるだけでなく、笑ったときに相手に食べかすが見えてしまいますね。
食べ終わった器は、きれいに片付けるつもりで、器を重ねる人がいます。
片付ける人の手間を考えると、器を重ねたほうがよいのではないかと思います。
しかし、これはやってはいけないマナーです。
和食では食事前、一般的に「おしぼり」が登場します。
冷たい水や温かい湯で湿して絞った、小型のタオルです。
食事前、手の汚れを落とすため、用意されています。
出された食事はすべて食べきるのがマナーではありますね。
残らずきれいに食べ終わった器は「大変おいしい料理でした」というメッセージです。
きれいに食べきる。