執筆者:水口貴博

美術鑑賞を楽しむ30の方法

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美術品を見るときは「制作年」もチェックしよう。昔の作品が美しく残っていることは感動に値する。

美術品を見るときは「制作年」もチェックしよう。昔の作品が美しく残っていることは感動に値する。 | 美術鑑賞を楽しむ30の方法

美術館で美術品を見るとき「美術品」だけなく「制作年」に注目してください。

制作年は、解説パネルを見ればすぐわかります。

「へえ、この時代、この年代に作られたものなのか」

「古い作品」と思うだけで終わりそうですが、要チェックのポイントです。

現代アートを除けば、美術品の多くは100年以上前に制作されたものばかりです。

たとえば、印象派の芸術家による絵画は、100年以上前のものばかりです。

100年以上も経過しているにもかかわらず、色鮮やかな色彩が保たれているのは感慨深い。

レンブラントやフェルメールの作品は300年以上前の作品にもかかわらず、現代でも目を見張る美しさを放っています。

美術品によっては、300年前、500年前、もっと古くに制作された美術品も少なくありません。

作品鑑賞に余裕があれば「時間の横軸」という視点もおすすめします。

制作年をチェックしたら、日本史・世界史を思い出しながら、同時期に起こった出来事を思い出してみましょう。

フェルメールの作品『ミルクを注ぐ女』は、1657年の作品とされています。

1657年といえば、当時の日本は江戸初期に当たります。

太平の世が始まり、貨幣経済が浸透し、庶民の暮らしも安定し始めた時期です。

参勤交代で各地の大名が江戸との間を行ったり来たりして、忙しくしていた時期でもあります。

そんな時代に描かれた作品と思うと、いかに古い作品であるか実感しやすくなるでしょう。

また、違った視点が生まれ、面白おかしく楽しめるはずです。

レオナルド・ダ・ビンチの名作『モナ・リザ』は、1503年から1506年の制作とされています。

日本でいうと、戦国時代の初期に当たります。

応仁の乱の後、日本各地で下克上の風潮が高まっていく時期に描かれた作品かと思うと、不思議な感覚に包まれるでしょう。

日本が争いごとばかりしている中、レオナルド・ダ・ビンチは、美しい女性を見ながら絵を描いていたのです。

そんな大昔に制作されたものが、美しい色や形を保ったまま、現代まで生き続けているのです。

「こんな昔に制作されたものなのか!」

「当時見ていた人と同じものを見ている!」

「はるか昔の作品にもかかわらず、今でも美しいのは素晴らしい!」

医学の祖であるヒポクラテスの名言「芸術は長く、人生は短い」を実感できる瞬間です

これは絵画だけでなく、彫刻や工芸でも同じです。

自分が生まれる前のはるか古い作品にもかかわらず、今でも美しく輝き続けているのは感動に値します。

当時見ていた人と同じものを見られるのはありがたいことであり、奇跡的なことです。

古びたところはあるかもしれませんが、それこそが味わいであり、醍醐味だいごみです。

長い時間の経過を意識しながら美術品を鑑賞すると、より味わい深くなるでしょう。

美術品だけでなく、制作年にも注目すれば、感動が2倍になるのです。

美術鑑賞を楽しむ方法(22)
  • 美術鑑賞のときは「美術品」だけでなく「制作年」もチェックする。
  • 時間の横軸で鑑賞してみる。
なぜスタッフに質問しても、きちんと答えてもらえないことが多いのか。

美術鑑賞を楽しむ30の方法

  1. 美術館は、心を豊かにする場所。
    入館の前と後のあなたは、別人になっている。
  2. 美術鑑賞は「見たいな」と思う展覧会を見つけることから始まる。
  3. ネットでの美術鑑賞で満足してはいけない。
  4. 美術鑑賞を高尚なものだと考えない。
    肩の力を抜いて、気軽に楽しむことが大切。
  5. 展覧会に足を運ぶ際は、予習をしておこう。
  6. 美術館は、できるだけ平日の朝一に行くのが良い。
    夜間に開館しているなら、ナイトミュージアムもおすすめ。
  7. 美術館は、身軽な服装で行こう。
    靴はスニーカーがベスト。
  8. 劇場や美術館に入るときは、入り口に注目しよう。
    芸術鑑賞の時間は、劇場や美術館の入り口から始まっている。
  9. 音声ガイドを借りると、理解がすいすい進む。
    美術鑑賞がもっと楽しくなる。
  10. 美術鑑賞中は、マナーモードが基本。
    できれば機内モードがベスト。
  11. 鑑賞中の会話は認められている。
    ただし、大きな声での会話は控えるのがマナー。
  12. 撮影禁止の作品は撮影しない。
    作品ごとに一つ一つきちんと確認する。
  13. 美術品を見る時間より、解説パネルを見る時間のほうが長くなっていませんか。
  14. 美術鑑賞をするときの3つの基本ステップ。
  15. まずお気に入りを1つ見つける。
  16. すべての作品をじっくり鑑賞しなくていい。
    ぴんときたものだけ、時間をかけてじっくり鑑賞する。
  17. 至近距離で見るのはいいが、全体を見ることも忘れてはいけない。
  18. 作品リストを活用した、美術鑑賞の楽しみ方。
  19. 「家に飾るならどれにするか」という視点で鑑賞すると、面白い。
  20. 着席スペースがあれば、無理をせず座ろう。
    着座位置から鑑賞するのも面白い。
  21. 単眼鏡は、美術鑑賞をより深く味わうためのアイテム。
  22. 美術品を見るときは「制作年」もチェックしよう。
    昔の作品が美しく残っていることは感動に値する。
  23. なぜスタッフに質問しても、きちんと答えてもらえないことが多いのか。
  24. 気になる画家や作品が見つかったら、後から深く調べよう。
  25. 常設展にも足を運ぼう。
    美術館の「核」に当たる作品と出会える。
  26. ガイドツアーがあれば要チェック。
    入館料以上の楽しみを満喫できる。
  27. 「このエリアで一番気に入った作品はどれか」「本展のマイベスト3はどれか」という視点で鑑賞すると、面白い。
  28. 美術鑑賞の最後は、ミュージアムショップを楽しもう。
    気に入ったグッズがあれば、迷わず買うのが吉。
  29. 気に入った展覧会は、図録の購入がおすすめ。
    図録の3つのメリットとは。
  30. 何度も鑑賞するのも、粋な楽しみ方。

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